2012 Fiscal Year Annual Research Report
アタッチメント理論と病児保育:その有機的架橋に向けた萌芽的研究
Project/Area Number |
22653076
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 利彦 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90242106)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 病児保育 / アタッチメント / 乳幼児 / 先天性疾患 |
Research Abstract |
現在、入院病児の保育を目的とした院内病児保育所が着実に増えつつあり、病児の身体的なケアのみならず心の育ちに対しても関心が高まってきている。しかし、そこでの保育は多くの場合、少数の保育スタッフによって手探りで進められているというのが実状であり、明確な理論的方針に基づいたものとは言い難い。特に本来、最も重要なアタッチメント形成期たる乳幼児期に病気等によって養育者との分離にさらされた子どもに対して、保育士が医師や看護師らといかに連携を図りながらそのケアをなし得るのかということをめぐる現場の混乱は著しく、その確かな指針となる理論や実践的方法論が求められている。本研究は、そうした理論や方法論の模索を目指したものである。今年度は、継続してきた院内保育所におけるフィールド・ワークに加え、顎顔面形態と聴覚等に先天的疾患を抱え、病院から定期的に保育所に保育を委託された1歳代の乳児のケースに着目し、保育士との共同のもとで、そのあり得べき保育の方法等について模索した。そのケースは、親の特殊な事情により児童相談所が親権を有し、出生直後から病院での生活を余儀なくされるという特殊な事例であったが、アタッチメント障害における無差別的社交性(特定対象への選択的アタッチメントが希薄で、誰彼構わず、シグナルの表出を向けるなど)の特徴が顕著であり、その改善が急務と考えられた。保育所内では、特定の保育士が、情緒的利用可能性(emotional availability)の原則に則り、物理的にも情緒的にも高度に一貫した関わりを持つ中で、徐々にその特定保育士との間に緊密な情緒的絆が形成されていく様子を見て取ることができた。しかし、このケースでは、保育所での生活は週の内のごく限られた時間でしかなく、しかも、主たる生活の場である病院との連携が実質的に不可能であり、今後のトータル・ケアのあり方に大きな課題が残ったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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[Book] 遠見書房2012
Author(s)
小林隆児・遠藤利彦(編著)
Total Pages
318
Publisher
「甘え」とアタッチメント
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[Book] 新曜社2012
Author(s)
氏家達夫・遠藤利彦(編著)
Total Pages
342
Publisher
社会・文化に生きる人間