2010 Fiscal Year Annual Research Report
援助専門職による高齢者虐待の予防に資する共感性低下現象(共感的排除)の解明
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22653086
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Research Institution | Shizuoka Eiwa Gakuin University |
Principal Investigator |
波多野 純 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 教授 (10311953)
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Keywords | 共感性 / 対人援助 / 高齢者虐待 / 介護 / 組織心理 |
Research Abstract |
「援助専門職による高齢者虐待の予防に資する共感性低下現象(供感的排除)の解明」の初年度である今年度は,高齢者施設での援助場面において,援助対象であるはずの高齢者がいかにして虐待の対象となるのかを,援助専門職従事者の共感性の低下からとらえる理論的枠組みを構築する作業を行なった。この作業のために,高齢者援助に関する文献を幅広く収集し,高齢者援助という文脈で共感性がどのように働くかを考察した。文献収集にあたっては,高齢者施設援助に関する研究論文の他に,関連するルポルタージュやエスノグラフィー的な記述資料,および共感性,非人間化に関する研究を中心に収集し,高齢者援助という文脈で働く共感性のメカニズムについて仮説的なモデルを構築した。ある対象に対して共感性が喚起される場面では,その対象が示す認知的な手がかりが重要な意味をもつと考えられる。ところが文献研究の結果,高齢者虐待では,「高齢者施設」という環境ならびに高齢者自身が有している特徴が,援助者の共感性を喚起する認知的手がかりとしての効力を喪失させる場合があるという可能性が見出された。これらの見解をもとに展望論文を執筆し,学術誌への投稿を行なった。この論文は査読者による審査が終了し,次年度(平成23年度)には公刊される見通しである。詳細についての報告は平成23年度に行なう。 また上記の作業と並行して,次年度に行なう計画となっている面接調査の準備として,面接協力の依頼ならびに協力者との打ち合わせを行なった。現在までに,静岡,名古屋,徳島,新潟の介護施設・福祉関係者に面接協力を依頼し,調整を行なっている。さらに,次年度以降に計画している実験研究に向けて,実験課題と指標の検討を開始した。これについては,実験計画の詳細が平成23年度の面接調査の結果を待って決定される予定のため,その予備的検討として近年の社会的認知研究の成果を中心に情報収集を行なっているところである。
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