2011 Fiscal Year Annual Research Report
高度研究型大学における学術経営のあり方に関する研究 -学術健全度指標開発の試み
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22653097
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船守 美穂 東京大学, 評価支援室, 特任准教授 (70377141)
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Keywords | 学術経営 / 研究型大学 / 大学執行部 / 学術水準 / 自己規律 / アカデミア / 教員合議制 / 大学運営 |
Research Abstract |
今年度は高度研究型大学であるカリフォルニア大学バークレー校(UCB)およびスタンフォード大学の学術マネジメント体制を調査した。 大学運営は一般に大学の執行部が中心となっていると理解されており、昨年度はミシガン大学アナーバー校およびニューヨーク州立大学バファロー校の執行部に着目して調査を行ったが、その後、UCB高等教育研究センター(CSHE)関係者からUCBの水準維持・向上におけるAcademic SenateとAcademic Program Reviewの重要性を指摘され、今年度は特にこれについて着目して調査した。 Academic Senateというのは日本の国立大学時にあった教育研究評議会のような組織で、教員が大学運営にかかわる仕組みであるが、日本の国立大学と異なるのは、1)委員が部局代表ではなく、分野バランスには配慮しつつも教員からの選挙により選出されること、2)座長が大学執行部のメンバーではなく委員の中から選出されること、3)執行部への助言という位置づけであるがその意見は実質的には尊重されること、4)UCBのAcademic Senateの最も重要な機能として教員人事も含まれることである。特別の建物や事務局もあり、委員長や教員人事の委員は任期の2年間フルに活動するという。ただし、スタンフォード大学では教員人事はAcademic Senateとは別のAdvisory Comitteeが担うなど、Academic Senateの任務の範囲や権限、運用は大学によって異なる。 Academic Program Reviewは、大学が自身の質の維持のために行う自己点検評価である。学外や学内他専攻の外部評価委員による外部評価もあり、最終的には次回評価までの改善勧告も必要に応じて行われる。 今回の調査ではアメリカ西部地区基準協会も訪問したが、ここでも会員校の議論による評価基準の策定の重要性を指摘していた。全般に米国のアカデミアが自らの手でアカデミアとしての基準を設け、徹底した自己/相互評価により自己規律を保っていることが分かった。米国研究大学の世界的な強さの大きな要因がここにあると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は欧米研究大学の学術経営のあり方を参考に、日本の研究大学の学術経営のあり方を検討しようとするものであり、本年度までに米国研究型大学の学術経営体制に関する一定の理解が進んだことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。また、研究重視から社会へのインパクトや学部教育重視などの研究型大学のパラダイムシフトの兆候を研究の過程でつかめたことは大きな成果といえる。一方この兆候は、時代を通じて通用する学術健全度指標の開発という研究目標達成の難しさも意味する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では「学術健全度指標」の策定を目標として掲げたが、研究の過程で米国研究型大学が急速に性格を変えつつあり、研究型大学のパラダイムシフトといったことまで語られていることから、時代を通じて通用する学術健全度指標の開発という研究目標の達成が難しくなっている。これについては、このような指標において留意すべき視点を挙げるかたちで対応していきたい。 一方で、これまで着目されていなかったAcademic Senateなどのアカデミア自身による自己規律保全の仕組みは重要であり、H24年度はこうした仕組みを更に掘り下げ、学術経営を広い視野で捉えていきたい。
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Research Products
(3 results)