2011 Fiscal Year Annual Research Report
生涯学習をベースとした領域融合的な実践科学としての「文化工学」の創成
Project/Area Number |
22653098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧野 篤 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (20252207)
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Keywords | 生涯学習 / まちづくり / 日常性 / 文化 / 地域活性化 / 静かなダイナミズム / つながり |
Research Abstract |
本研究の目的は、人的・文化的資源を基礎とした、その地域の特色を生かしたまちづくりを中長期的に支える研究プログラムを、生涯学習をベースとして確立するとともに、新たな研究領域を立ち上げることにある。第2年度は、研究者が地元のアクターとともに文化的側面を重視した介入的なアプローチを進めることで、生成と循環を基本とした価値多元的なまちづくりの論理を紡ぎ出す必要があるとの観点から、長野県飯田市、愛知県豊田市、千葉県柏市を中心とした介入的な実践を行った。 この過程で明らかとなったのは、人々が生活する現場レベルの実践には、動的であるが故に定常的であるような、人々の生活を支え、地域コミュニティを維持し続けるためのダイナミズムが息づいているということである。これを、「静かなダイナミズム」と呼ぶ。この静かなダイナミズムにはコミュニティのリーダーを育成し、抜擢する仕組みと、日々の生活にあって見えにくい住民相互の結びつきを可視化し、意識化するための様々な仕掛けが組み込まれている。町内会や組などの役員選任の方法、運動会・お花見・普請などのイベントがそれである。それらはまた、小学校と密接に結びついている。人々はこれら「お役」を担うことで、他者との相互関係の中で、自分を確認し直している。 そこでは、まちづくりは、経済的な手法とは異なる手順を踏む。まず、「つながり」をつくること、つながることで人々の関係が生まれ、そこから生活上の需要が生まれ、それが循環することで、さらにつながりが強化される。その結果、地域の経済が回り始めるが、それは人々の関係を切断する市場経済ではなく、市場を介して人々が固く結びつき、他者に対する配慮と社会的な包容が生まれる経済である。この経済が循環することで、各コミュニティは独自の文化を保ちつつ、相互に連携して、社会全体を自治的に治めている。この論理の析出と介入のプログラム化が進められた。
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Research Products
(7 results)