2011 Fiscal Year Annual Research Report
大学教育効果をめぐる卒業生調査と大規模社会調査の統合的分析に関する研究
Project/Area Number |
22653105
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平澤 和司 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (30241285)
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Keywords | 大学教育効果 / 卒業生調査 / 社会調査 / 不完全データ |
Research Abstract |
大学教育の効果(たとえば大学での成績が所得を増加させるか)の大きさを正確に推計するためには、官庁統計や大規模な社会調査(SSMやJGSSなど)だけではなく、個別の大学が行った多様な卒業生調査を併用することが有効である。しかし現状では両者が完全に分離されたまま分析されている。そこで本研究では、両者を統合して分析するには、両データにどのような処理を施せば良いかについて、その方法論を提案することを目的として研究を展開した。その結果、明らかになったことは、以下の通りである。 (1)まず卒業生調査を行った大学の卒業生の特性(たとえば所得)の分布を、大卒者一般、あるいは設置者や入学難易度が類似の大学群の所得の分布と比較することで、当該大学の卒業生の特徴が明らかになる。しかし、こうした基本的な分析を行っている卒業生調査報告書はほとんどなかったので、研究代表者がアクセス可能なデータでそうした記述的な比較を行い、それらを他の卒業生調査実施大学に見せたところ、高い関心を示された。 (2)つぎにたとえば成績が所得に与える効果の大きさを推計する際、近年着目されている、共変量をもちいて不完全データを補正する考え方を応用して、両者を統合することを試みた。その結果、ほぼすべての卒業生調査が有意抽出データのため、同じく有意抽出データであるインターネット調査データを補正して、大規模社会調査のような無作為抽出データとして分析する考え方は、卒業生調査データにも応用できることがわかった。しかし、補正の際に鍵となる共変量(大規模データと卒業生データに共通する、所得と成績以外の変数)がきわめて限られていること、また大学によっては、それが大卒者全体の中で占める比率がきわめて低いため、通常の共変量の選択方法のままではうまく分析できないこと、が示された。現在、その解決方法を考案中である。
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