2011 Fiscal Year Annual Research Report
多粒子離散モデルの導入によるバクテリアコロニーパターン形成への数理的接近
Project/Area Number |
22654012
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長山 雅晴 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20314289)
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Keywords | 粒子運動モデル / 反応拡散系 / モロフォロジーダイアグラム / 同心円パターン / イーデンパターン / 数理モデル |
Research Abstract |
本年度は,枯草菌小集団運動の数理モデルの構成,枯草菌コロニーパターン形成の数理モデル構築を行い,最後に他のバクテリアに対する数理モデルへの適応を目標として研究を推進してきた. 枯草菌小集団の数理モデル化については,前年度構成した枯草菌1個体モデルの数値計算データに基づいて統計データを取り,小集団運動を一つの粒子として考えたときの粒子間相互作用を記述する数理モデルを構築した.この数理モデルと栄養場の反応拡散系を融合した数理モデルを使って枯草菌コロニーパターン形成のモロフォロジーダイアグラムの再現を目指して数値計算を行った.その結果,同心円パターン以外のパターンを再現することに成功した.しかしながら,寒天媒質の堅さ(粒子運動の抵抗)と寒天中の栄養濃度の2パラメータによるモロフォロジーダイアグラムとしてイーデンパターン,PBMパターン,DLAパターンを再現することができなかった.すなわち,「寒天の堅さに依存して相互作用の関数形を変化させること」や「栄養濃度に依存して分裂に対する関数形を変化させること」によって円盤パターン,イーデンパターン,DBMパターン,DLAパターンを再現することしかできなかった.この研究結果は,相互作用関数や分裂が栄養濃度場に依存している可能性を示唆しているとも考えることができる.この結果を踏まえて,昨年度に挑戦した反応拡散系モデルに対して相互作用を考慮した拡散や濃度に依存した分裂に対応する関数形を再考することによってモロフォロジーダイアグラムを再現することが可能となるのではないか考えられる.今年度の研究は成功裏に終えることができなかったが,これまでの数理モデルに対して新しい依存性を考慮することが必要であることを示唆した点で重要な成果を得られたと考えられる.
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