2011 Fiscal Year Annual Research Report
条件Cと性質(T)―大域変分法とユニタリ表現論の背後にあるものを求めて
Project/Area Number |
22654021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金井 雅彦 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (70183035)
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Keywords | 条件C / 性質(T) |
Research Abstract |
1960年代,ふたつの概念が誕生した.ひとつはPalais-Smaleにより提出された条件C,もうひとつはKazhdanにより発見された性質(T)である.前者は大域変分法を,後者はユニタリ表現論をその生誕の地とする.これらふたつの概念は互いに他と交わることなく,全く独立した道を歩んできたように見える.ところが,これらふたつの概念には実は極めて強い類似性が観察される.その類似性の背後には分野を横断する大きなメカニズムが存在することが予感される.コンパクト性,それこそが条件Cと性質(T)に関する類似性であると考える.条件Cがコンパクト性のひとつの具体化であることは言うまでもない.しかし,性質(T)もコンパクト性のある種の発現であると認識している研究者は,決して多くないはずである.性質(T)の背後に見え隠れする「コンパクト性の源」の正体を暴き,その発見を新たな武器に申請者が長年取り組んでいる群作用に対する剛性問題のさらなる発展を目指す-これが本研究計画の目標であった. 幾何学においても数多くの変分問題が登場するが,山辺の問題,調和写像,Yang-Mills接続など,その大半は非線形的な問題である.しかるに一方,Kazhdanの性質(T)はユニタリ表現論をその住処とする.したがって,それはアプリオリに線形的である.性質(T)の「非線形化」が望まれる所以である,例えば,(通常の)Poincare不等式の「非線形版」として,写像に対するPoincare不等式なるものが考えられる.その「葉層化多様体版」の開発を目指し,2年間研究を行ってきた.いくつかの部分的な結果は得られたものの,残念ながら私自身が期待していたような説得力のある成果をえることは出来なかった.
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