2011 Fiscal Year Annual Research Report
螺旋状に伝搬する光と物質のかかわり合い-フォトンの軌道角運動量を介した相関の発現
Project/Area Number |
22654033
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
荒岡 史人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (10467029)
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Keywords | 有機材料光物性 / 光学活性 / 光計測 |
Research Abstract |
本研究はラゲールガウシアン(LG)光と呼ばれる、等位相面が螺旋状に捻れながら伝搬する光波と、物質の掌性(キラリティ)の間の新たな相互作用の有無を実験的に探索し、その実用可能性を検討することを目的とする。本年度(平成23年度)は、前年度に作製した屈曲形液晶のヘリカルナノフィラメント試料、空間位相変調器によるLG光発生-応答測定システムにより、キラル相互作用の可能性を探索した。Ar+レーザーの515nmの光を用いて測定を行ったが、通常光とLG光とで有意な差は認められなかった。この理由として、1.LG光は本質的にキラル相互作用に関わらない、2.実験条件が適切でないため観測できていない、という2つの可能性が考えられる。1に関しては、ごく最近発表された論文(LloydらPhys.Rev.Lett.108,174802(2012))にて、理論的に、LG光による相互作用はダイポールではなく高次のマルチポールが必要と提案されている。このため、このようなマルチポールが相互作用の主体となるような物質系についても探索することとする。具体的には、磁気双極子や電気四重極子を発生させるフラーレンやフタロシアニンなどのキラル誘導体を想定している。2については、光源の波長が適切でない可能性、および微小サイズの試料を捉え切れていない、といった可能性が考えられる。このため、より吸収に近い488nmの光と、微小な領域を測定するための顕微鏡光学系を用意した。これらを用い、引き続きヘリカルナノフィラメント試料について測定を継続する。 またLG光とは直接関わりがないが、上記ヘリカルナノフィラメント試料と棒状液晶を混合させることで、円二色性の信号を増大させかつ電場制御することに成功した。ヘリカルナノフィラメント試料においてLG光とのキラル相互作用を確認することができれば、こうした混合試料についても実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラゲールガウシアン光を発生させる測定系の構築およびヘリカルナノフィラメント試料の準備、これらを用いた測定に関しては、ほぼ計画通り進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「研究実績の概要」でも述べたとおり、本研究で発見を目指している相互作用は現時点で観測されていない。この理由として、1.本質的にこうした相互作用はない、2.実験条件が適切でないという2つの可能性を考えた。新たな理論の論文によれば、当初予定していた試料ではなく、より高次のマルチポールが介在するような物質系でなければならない。このため、1の可能性に関しては、磁気双極子や電気四重極子を発生させる試料をヘリカルナノフィラメントとは別個に用意する。2に関しても、新たな光源や顕微鏡の導入を行い、続く最終年度である24年度も引き続き実験を行うこととする。
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