2011 Fiscal Year Annual Research Report
メタンハイドレート成因解明をめざした生物学的メタン生成とハイドレート形成の再現
Project/Area Number |
22654066
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鎌形 洋一 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究部門長 (70356814)
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Keywords | メタン生成古細菌 / 地下圏微生物 / 水溶性天然ガス / 高圧培養 / 同位体分別 |
Research Abstract |
本課題は、生物的メタン生成を高圧下で起こす事が可能か否か、さらには生物的メタン生成とメタンハイドレートを同一の高圧容器内で起こす事が可能か否か、を検証することによって、海洋ならびに陸地地下圏において今なお起きつつあると推定される生物学的メタン生成ならびにメタンハイドレート形成を実験室的に再現することを試み、メタンハイドレート成因解明をめざすものである。本研究ではまず生物的メタン生成を高圧下で起こす事が可能か否かを検討した。昨年に引き続き、供試微生物として地下圏に広く存在する典型的なメタン生成古細菌であるMethanothermobacter thermautotrophicusを用いた。同菌は水素・二酸化炭素ならびに蟻酸を炭素源ならびにエネルギー源として用いメタンを生成する微生物である。我々は高圧培養による水素ガス基質の取り扱いの困難さから、まず、蟻酸を用いて高圧培養を試みた。高圧培養にはメタンハイドレート生成実験に用いる数種のカラム状高圧容器を用いた。培養はシリンジポンプにより圧力容器内部の圧力を保持しながら上述したメタン生成古細菌の培養液ならびに基質を注入し、カラム状容器に高温ヒーターを装填して行った。解析は背圧制御弁を通して排出される溶液をセプタム法でシリンジにより抽出し、溶存ガスを測定した。本実験手法を用いることによって当該メタン生成古細菌が温度55℃、圧力0.1MPa、10MPa及び15MPaの条件で生育しメタンの生成を確認することに成功した。15MPaは150気圧を意味している。圧力による生育の遅延等は顕著ではなく、メタン生成古細菌がこうした圧力に耐性を持つこと、高圧培養であるがゆえに、生成物であるメタンが培養液に溶解状態になっていることが考えられることから、生成物であるメタンそのものにはメタンの生産性を阻害する要因がないものと予想できた。これらの実験条件とともにメタンの水素の同位体分別比を測定したところ、海底メタンハイドレートの同位体データと同様の傾向を示すという予備的結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタン生成古細菌の高圧培養条件を決定するところが最も重要な律速段階であったが、幾度も検討を加えた結果順調かつ再現性ある培養が可能となった。2年目までに培養手法を確立しようとしていたため、おおむね順調と自己判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
メタン生成古細菌を高圧培養することによってメタンの炭素あるいは水素の同位体分別がどのように変わるかを詳細に調べる予定である。高圧という条件の中で生物的なメタン生成反応が起きれば、その同位体分別とメタンハイドレート中のメタンの同位体分別が近似する可能性が高い。この点を重点的に最終年の研究を進めたい。
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Research Products
(2 results)