2011 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理動力学シミュレーションによる分子ジャイロスコープの機能評価と設計
Project/Area Number |
22655003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河野 裕彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70178226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬高 渉 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (60321775)
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Keywords | 分子機械 / 分子ジャイロスコープ / レーザー電場 / 光学材料 / X線結晶構造解析 / 第一原理電子状態計算 / 分子動力学計算 / 電子物性 |
Research Abstract |
近年、単分子スケールで制御された機械的運動を実現する「分子機械」の設計・合成が注目を集めている。分子機械の1種である「分子ジャイロスコープ(分子ジャイロ)」は、外部骨格とそれに保護された回転子を持つ機能性分子である。分子ジャイロの回転子の運動をレーザー電場などで制御する試みがなされている。電場に対して瞬時に応答する分子ジャイロを設計できれば、液晶よりも高速に動作する偏光制御可能な光学材料などの実現が期待される。分子ジャイロの結晶構造や回転障壁を正確に見積もるには、回転子-固定子間の弱い長距離相互作用までも高精度で評価しなくてはならない。我々は高機能分子ジャイロの設計・合成の指導原理の提案を目指し、密度汎関数法に加えて、計算負荷が軽いながらも分散力も取り扱える密度汎関数緊密結合法に基づく電子状態計算と分子動力学計算を行い、分子ジャイロの結晶構造と回転子の挙動を評価した。 シラアルカンかご状骨格を持つ分子ジャイロは結晶中でフェニレン環(回転子)の配向に対して3つの平衡構造を持つことがX線構造解析から分かっており、我々の電子状態計算はこれらのX線構造を再現することに成功した。また、フェニレン環の回転に対するポテンシャル曲面を算出し、シラアルカン分子ジャイロが(1)回転子の一方向回転を誘起しうる非対称なポテンシャル曲面と、(2)非常に低い回転エネルギー障壁(約1kcal/mol)を有することを明らかにした。これらの特徴は、外部骨格によって回転子が周囲の分子から効果的に遮蔽されていることに起因する。更に、分子動力学計算により、高温条件下でフェニレン環が3つの平衡構造の間を移動して回転することを見出した。このようにして、シラアルカン分子ジャイロの電子物性と動的挙動を評価し、熱や外部電場に対して高効率で回転する新規な分子ジャイロを設計するための理論的基礎を築いた。
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