2010 Fiscal Year Annual Research Report
原子核体積は化学反応にどのように影響するか:同位体分別の量子化学的研究
Project/Area Number |
22655006
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
波田 雅彦 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (20228480)
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Keywords | 相対論的量子化学 / 核体積効果 / 同位体分別反応 / 電子状態理論 / 宇宙化学 |
Research Abstract |
最近、同位体間での原子核の僅かな「体積」の相違が電子状態に影響を与え、それが主原因となって同位体分別が起こるという理論が注目を浴びている。今年度、我々は、核体積の僅かな変化を考慮することができる精密な相対論的量子化学計算を使い、ウラン化合物の同位体分別係数に関するリガンド効果について検討した。核電荷分布モデルをGauss型関数にし、単配置理論のDirac-Hartree-Fock法を、基底関数展開を用いて解いた。これらの理論は先の原子用の理論よりも多くの近似を含む。そこでまずU3^+-U4^+計算で原子モデルの結果を再現するか確認し、これらの近似が適正な基底関数を用いれば再現できることを示した。さらに、U4^+-UO_2^<2+>というモデルで4価-6価の酸化還元反応を考慮し、基底関数の依存性や、核の体積効果が分子振動や分子構造にはほとんど影響しないことを精密に調べた。実際は約5Mの塩酸水溶液中で反応がおこるため、Cl^-を配位子に持つウラン錯体がより現実的なモデルと考えられる。そこで、UO_2Cl_4^<2->やUO_2Cl_3^-分子を反応物とし、4価-6価の分別係数を求めたところ、計算値:0.00190~0.00195、実験値:0.0024となり、よい一致が得られた。また、仮想的にCl^-をほかのハロゲンに置換し、化学結合と核の体積効果の関係も調べた。今回は計算手法確立という目的のため、小さな分子系への適応であったが、今後の応用としては隕石の結晶状態など中規模分子への適応を目指したい。
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