2011 Fiscal Year Annual Research Report
界面選択的超高速二次元分光の開発と水の界面構造の解明
Project/Area Number |
22655009
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田原 太平 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 主任研究員 (60217164)
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Keywords | 非線形分光 / 時間分解分光 / 振動分光 / 界面 / 水 / 超高速ダイナミクス |
Research Abstract |
界面選択的超高速二次元分光の開発を目指し、独自に開発したマルチプレックス・ヘテロダイン検出振動和周波(HD-VSFG)分光法の時間分解測定への拡張を行った。通常のVSFG分光法では、赤外光(振動数ω_<IR>)と可視光(振動数ω_<VIS>)を界面に同時に照射し、界面から発する和周波信号(振動数ω_<IR>+ω_<VIS>)を検出する。われわれが開発したHD-VSFG分光法ではさらに、発生する和周波信号と別に発生させた参照光を位相関係を確定して混合してヘテロダイン検出を実現し、二次非線形感受率の自乗(|χ^<(2)>|)ではなく、二次の非線形感受率そのもの(χ^<(2)>)の実部と虚部スペクトルの測定を実現する。HD-VSFG測定を時間分解測定へ拡張するため、ポンプ光ω_<pump>を照射して分子の振動励起を行い、適当な遅延時間ののちにHD-VSFG測定を行った。これによって界面分子の振動緩和ダイナミクスをχ^<(2)>の虚部スペクトルの時間変化として追跡できる。この方法、すなわち時間分解ヘテロダイン検出振動和周波発生(TR-HD-VSFG)分光を帯電した水界面(荷電をもつヘッドグループを有する界面活性剤/水の界面)に適用し、世界で初めて液体界面の時間分解振動χ^<(2)>スペクトル測定に成功した。得られた虚部スペクトルは、バルク液体のダイナミクス研究に広く用いられているフェムト秒時間分解赤外スペクトルと直接比較することのできるスペクトルである。分子内/分子間相互作用を最小限に抑えるために、HOD種がOH伸縮振動バンドを与えるように重水を混合して実験を行ったところ、励起直後にポンプ光ω_<pump>の振動数領域に明らかのスペクトルの穴が検出され、それが数百フェムト秒で広がっていく様子が観測された。これによって水界面における水素結合の不均一性によるホールバーニングとそれに続くスペクトル拡散現象が初めて観測できた。
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