2010 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線分光法を大気圧環境下で利用するための、新しい検出システムの開発
Project/Area Number |
22655023
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
為則 雄祐 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (10360819)
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Keywords | 軟X線 / 大気圧環境 / XAFS分光法 / 蛍光収量法 / 転換電子収量法 |
Research Abstract |
軽元素の内殻励起エネルギーに対応する軟X線は、物質に対する透過力が弱く大気中をも透過できないことから、その利用は真空下に限定されてきた。結果、測定対象は大幅に制限され、軟X線の利用は一部の基礎科学的な研究に留まってきた。しかしながら、透過率の低さは物質との強い相互作用の裏返しでもあり、軟X線は軽元素を含む物質の化学状態・電子状態観測手段として大きな可能性を秘めている。本課題では、軟X線吸収分光法を"大気圧環境下にある実材料"の分析手法として展開することを目指して、大気圧環境下での軟X線吸収測定法の開発を行った。研究はSPring-8/BL27SUにおいて実施した。試料位置の直前に差動排気装置を配備し、大気圧ヘリウム充填された測定槽とビームラインを直接接続した。転換電子収量法に代表される様に、大気圧環境下では導電性試料のみならず、絶縁性試料に対しても電子収量測定が可能となることは知られている。そこで、軟X線領域においても大気圧環境下で電子収量法の適用が可能かどうか、評価を行った。 結果、大気圧環境下では、試料ホルダに数十ボルト程度のバイアスを印加するだけで、絶縁物試料に対しても簡便に試料電流法を用いた電子収量測定が可能であることが分かった。また、大気圧まで圧力を高くせずとも、中真空程度(~1Pa)まで試料環境の圧力を高くすることで、本手法が適用可能であることも確認された。大気圧環境下で測定を行う事によって帯電が中和され、電子収量測定が可能となっていると考えられる。また、蛍光収量測定に見られるような自己吸収の影響も見られなかった。本研究によって、大気圧ならびに低真空環境下では、蛍光収量法と試料電流法を組み合わせることによって、絶縁物を含む広範な試料に対して表面とバルクの電子状態を同時に観察可能であることが明らかとなった。
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