2010 Fiscal Year Annual Research Report
配位不飽和性を制御因子とする鉄触媒の設計概念の創出と特異的触媒反応の実現
Project/Area Number |
22655029
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永島 英夫 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (50159076)
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Keywords | 元素戦略 / 鉄錯体 / 鉄触媒 / 共役付加 / カップリング / 1,2-付加 / エノレート生成 |
Research Abstract |
本研究は、配位不飽和鉄錯体の設計、合成、構造・電子構造解析、素反応過程の解明をおこなう錯体化学的検討と、得られた知見から触媒反応を設計し実現する研究手法で、従来Pd等の貴金属で実施されている分子触媒反応を、地球上に豊富な資源量を持ち、安価で環境負荷の少ない鉄で達成することを目的としている。その実現の鍵として、14電子(L)2Fe(II)(mesityl)2(L=配位子)型鉄錯体の設計、合成し、その素反応過程を解明することにより鉄触媒反応の実現を図る。平成22年度の成果として、14電子(tetramethylethylenediamine)Fe(II)(mesityl)2錯体の基礎的な反応性を、とくに電子不足アルケンとの反応を中心に検討した。優れた電子受容体であるテトラシアノエチレンとの反応では、鉄上の2つのメシチル基がカップリングしてジメシチルが生成する。電子受容性が劣るフマル酸やマレイン酸エステルでは、カップリング反応のほかに1,4付加反応に由来するアルケンへのメシチル基の導入反応が起こる。種々のα,β-不飽和ケトンでは1,4-付加反応が選択的におこり、β-メシチルケトンを与える。種々のα,β-不飽和ケトンの反応を検討し、S-cis構造をとりうる基質では共役付加が、s-trans構造をとりうる基質ではエノレートの生成が、そして、アルデヒドでは1,2-付加が起こることが明らかとなった。これらの成果は、鉄錯体の素反応からは、鉄触媒による求核剤の共役付加反応、エノレート生成、1,2-付加反応が実現することを示唆した重要な知見である。
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Research Products
(6 results)