2010 Fiscal Year Annual Research Report
緩慢脱保護自己重縮合および動的共有結合化学に基づく大環状分子の定量合成と機能開拓
Project/Area Number |
22655037
|
Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
松本 利彦 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50181780)
|
Keywords | 高分子合成 / 超分子化学 / 動的共有結合化学 / 大環状分子 |
Research Abstract |
今年度(平成22年度)においては、MALDI-TOF MSなどを用いてシクロファン型大環状分子(環状m-フェニレンイミン六量体Cm6)が定量的に生成する機構を調べ、次いでこの定量合成法を拡張して種々の機能基を有する大環状分子群の創製および異種大環状分子の複合化を行うことを目的に掲げ、以下に記載した成果が得られた。 1.大環状分子の選択的生成機構の解明 水を開始剤としてm-アミノベンズアルデヒドジエチルアセタールを緩慢脱保護自己重縮合させ、大環状分子Cm6が生成する過程を、現有のMALDI-TOF MSとSEC(今年度補助経費でカラム購入)を使って詳細に調べ、π-スタック沈澱駆動重合および動的共有結合化学に基づく選択的生成機構を明らかにした。 2.定量的合成法を利用した種々の機能基を有する大環状分子の創製 Cm6合成法を拡張して種々の機能基を有する新規大環状分子を作製した。フェノール性水酸基を有するOHCm6の合成においては自己触媒的に脱アセタール化が加速され、生成した大環状分子はπ-スタッキングに加えて分子間水素結合によってカラム積層が促進・強化されるため短時間で沈澱に至った。一方、長鎖アルコキシ基あるいはトリエチレングリコール(TEG)鎖を持つ大環状分子はそれぞれ、ディスコチック液晶様熱挙動およびナノ線維構造ハイドロゲル特性を示すことが明らかになった。 3.異種大環状分子の複合化および大環状分子をモノマーとする高分子合成 イミン型大環状分子Cm6は溶液中で熱刺激により鎖状オリゴマーとの間で相互変換することがわかった。異種大環状分子(Cm6と側鎖オクチロキシ基で修飾したC80Cm6)の混合物を加熱して鎖状オリゴマーに換えることはできたが、冷却するとそれぞれの大環状分子が再生し、環の複合化および大環状分子をモノマーとした共重合による鎖状高分子合成は実現できなかった。しかし、この実験によって、Cm6類は形状異方性に基づいたπ-スタッキングに起因する鋭い自己複製性を有することを見出した。
|