2010 Fiscal Year Annual Research Report
カルベン型配位子能をもつN-混乱ポルフィリノイドの合成と応用
Project/Area Number |
22655044
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古田 弘幸 九州大学, 工学研究院・応用化学部門, 教授 (40244157)
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Keywords | カルベン / ポルフィリン / N-混乱ポルフィリン |
Research Abstract |
地球温暖化の主たる原因の一つと考えられている大気中の二酸化炭素(CO_2)量の削減に向けて、CO_2固定能を持つ新規の窒素複素環カルベン化合物(NHCs)に着目し、これまで報告例のないポルフィリン系カルベン錯体の創製に挑戦した。 環内部をモノメチル化したN-混乱ポルフィリンとReカルボニル試薬とを1,2-ジクロロベンゼン中、140度で16時間、反応させたところ、既知のN-フューズポルフィリンレニウム錯体と共に、新規錯体が25%の収率で得られた。単結晶X線構造解析の結果、分子内に[5.6.5]のフューズ骨格をもつ新規Reポルフィリンカルベン錯体であることが判明した。結合長を詳細に解析したところ、レニウム周りの配位環境が、これまでに報告されているレニウムN-ヘテロサイクリックカルベンとほぼ同等であることが明らかとなった。計算科学を用いて、分子軌道を検討したところ、メタルカルベン特有のd-π相互作用を示す分子軌道の存在が確認された。長波長側の光吸収帯の帰属を行ったところ、MLCT性の遷移であることが示唆された。また、NMR測定から、カルベン錯体は芳香族性を有していることが明らかとなった。一方、電気化学測定から、可逆的に一電子酸化、還元すること、化合物が酸処理でも安定であることが示された。同様の反応を、通常ポルフィリンで試みたが、カルベン錯体は生成せず、N-混乱ぽるフィリン特有の反応であることも明らかとなった。本研究の遂行により、ポルフィリン化学、カルベン化学、有機金属化学の新展開が期待される。
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