2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22655067
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 淳夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (30359690)
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Keywords | 複数電荷応答 / 酸化還元電位 / インターカレーション / ピロリン酸 |
Research Abstract |
インターカレーション反応をベースにした蓄電デバイスの大幅な高エネルギー密度化を実現するには、複数電荷による可逆的酸化還元反応を実現する必要がある。その可能性を有する、我々が発見した新電極材料Li_2FeP_2O_7においては2種類の遷移金属サイトが存在し、配位数など局所構造が異なっている。この2種類のサイトに対応する鉄の酸化還元反応がMnによる部分置換系Li_2Mn_xFe_<1-x>P_2O_7において安定化され、「電位分裂」と「高電位シフト」として観測されることを見いだした。その局所構造の違いからFeの反応電位に差が現れ、「電位分裂」が生じ「不安定な局所状態の増加に由来するさらなる高電位シフトが生じたと考えられる。開回路電圧の測定結果から、鉄の2価3価の酸化還元による高電位側の反応電位は、3.8から4V付近にも達していることが示された。単純なリン酸塩材料におけるFe^<3+>/Fe^<2+>の反応によってこれだけ高い電位が実現されたことは興味深い。様々な材料系におけるFe^<3+>/Fe^<2+>の反応電位の中でも、今回観測された4Vにも達する電位は、最も高い分類に属する。近年、Li(Mn,Fe)SO_4Fにおいて、ありふれた高スピンFe^<3+>/Fe^<2+>の反応電位が3.9V程度であることが報告されたが、より電気陰性度の大きいSO4^<3->,F^-を含んでおり、この意味でも今回の結果は驚嘆に値する。このような鉄が酸化還元反応による高電圧発生現象はMn以外の元素置換によっても共通して観測され、現象の一般性も確認できている。これらの事実から、Fe^<3+>/Fe^<2+>の酸化還元反応を利用した実用的な高電位材料の可能性が見えてきたと言える。また、Li_2MnP_2O_7が4.4V付近で電気化学活性を発現することを合わせて見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに発見した新材料の反応機構体系化に関して予想以上に進展し、鉄の酸化還元による異常高電位発生という新規な発見に繋がった。また、2電子反応の期待出来るマンガンによる電気化学特性も見いだされ、これらについての多くの学会発表と論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
新規材料の開発に向けた検討を加速する。これまでも、様々な組成の新物質合成を試みてきているが、物質の新規性と優れた電気化学特性の両立は実現できていない。候補材料についての設計ポリシーと優先順位をより明確化し、探索を継続する。
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