2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規な原理に基づく多孔質単結晶「スポンジ結晶」の材料化学の創成
Project/Area Number |
22655070
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
犬丸 啓 広島大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80270891)
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Keywords | マイクロポーラスクリスタル / ヘテロポリ酸 / ポリオキソメタレート / ゼオライト / スポンジ結晶 / 細孔径分布 / 固体NMR |
Research Abstract |
申請者らが発見し命名した「sponge crystals(スポンジ結晶)」とは、単結晶が、全体の単結晶の秩序性を失わずに、結晶の規則構造には組み込まれていないナノメートル程度の細孔を単結晶内部に生成する全く新しい多孔質単結晶の生成原理に基づく多孔質単結晶であり、ゼオライトのような従来のマイクロポーラスクリスタルとは原理的に異なる新しいタイプの多孔質結晶である昨年度に引き続き、ヘテロポリ酸塩(NH_4)_4SiW_<12>O_<40>の多孔質性の解析に注力するとともに、その細孔の機能発現についても視野に入れた検討を行った。まず、NH_4カチオンの状態分析を行うため、H MAS-NMRによる解析を行った。NH_4カチオンに帰属されるシグナルは、基本的に2種現れた。含水状態と脱水状態のスペクトルの比較、アンモニウムタングステンブロンズなどの文献値との比較から、高磁場側のシグナルをSiW_<12>O_<40>に挟まれ強く遮蔽されたNH_4カチオン、低磁場側のシグナルを細孔内表面に露出し遮蔽の弱いNH_4カチオンに帰属した。これらの積分強度比は約1:3となった。この比は、カチオン:アニオン比が3:1の結晶構造のカチオンサイトをすべてNH_4カチオンが占めて、組成比を保つためにアニオンサイトが1/4欠損し、その欠損が外部と連結している細孔モデルで矛盾なく説明できることが分子モデルの検討により明らかとなった。NH_4カチオンの一部をプロトンに置換した試料のNMRスペクトルも上記のモデルから説明可能であった。このように、この化合物では、スポンジのように単結晶中にランダムに空いていると考えられる。次に、細孔の機能を生かす意味で、この化合物の含水状態でのプロトン伝導を測定したところ、10^<-4>Scm^<-1>台の値が得られた。脱水すると伝導率が大きく低下することから吸着水が関与したプロトン伝導が発現していると考えられる。
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