2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22656008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松尾 二郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40263123)
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Keywords | フェムト秒 / X線回折 / 相転移 / レーザー / 結晶 |
Research Abstract |
フェムト秒からピコ秒における固体の励起状態の解明は、熱平衡状態にない極端環境下における新しい物理を開拓する極めて重要な学問分野である。時間分解X線回折測定では、この時間スケールで起こる固体中の原子・分子の運動を直接観測することが可能であり、現在、半導体・半金属の超高速相転移やコヒーレントフォノンなどの非平衡現象を解明する非常に有効な測定手法であると期待されている。我々は強度3.5mJ/pulse・繰り返し1kHzの低強度・高繰り返しTi:sapphireレーザーを用いたテーブルトップの時間分解X線回折実験システムを構築した。この低強度レーザーを用いた時間分解X線回折ポンプ・プローブ実験システムにより、従来の高強度フェムト秒レーザーを用いたシステムに比べて、簡便で高時間分解能の超高速現象を観測することが可能になると期待される。 VO_2は代表的な金属一絶縁体相転移物質であり、340Kで相転移を生じる。VO_2は低温では、monoclinic相を、高温ではtetragonal相を示すことが知られている。本時間分解X線回折法を用い、VO_2薄膜サンプルにおける(111)回折線のピーク位置、積分強度、回折線幅の時間変化を調べた。110fs,8.7mJ/cm^2のレーザーパルスを照射した。回折ピーク位置の変化から非常に早い時間スケール(<25ps)でmonoclinicからtetragonalに相転移することがわかる。しかし、積分強度は^~100ps程度の時間をかけて徐々に変化することが明らかになった。これは、VO_2の単位格子はMonoclinic相からTetragonal相へと25ps以内に遷移するが、Tetragonalの格子位置を中心として各原子位置がその変位の方向に対して揺らぎ(インコヒーレントな振動)を生じていると理解することができる。
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