2011 Fiscal Year Annual Research Report
ランダム・レージングを利用した革新的発光素子と新学術の創出
Project/Area Number |
22656019
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小原 實 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90101998)
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Keywords | ランダム・レージング / ランダム・フォトニック結晶 / アンダーソン局在 / マイクロ光共振器 / 光散乱 / 低群速度光 / 量子井戸構造 / ランダム |
Research Abstract |
屈折率がランダムな多重散乱系で、Mie散乱が極めて強く散乱平均自由行程が光波長より小さくなり、光が波長オーダーの微小領域内に局在する現象を光のアンダーソン局在という。この系で利得媒質を付与するとレーザ発振する(Randomlasing,ランダム・レーザ)。 本研究で初めて2次元スラブ構造のランダム・フォトニック結晶のレーザ発振特性について実験的に実証し、光のアンダーソン局在の直接的な観測に成功した。デバイスは、ガラス基板上のInP薄膜に、半径185nmの円孔を格子定数530nmの三角格子状に作製した構造を持つ。レーザ利得としてInP/InAsP量子井戸構造をもつ。波長1.5μmのTE波がフォトニックバンドギャップ直下の最低次バンド端に位置し、全反射で垂直方向閉じ込める構造である。円孔の位置をランダムな方向にδnmシフトさせ、ランダムな揺らぎを導入した。805nmのLDで光励起すると、δ=0.4と10mmから、レーザ発振が観測できた。δ=10nmの発振スペクトルはブルーシフトした。これはバンドギャップの乱れによりバンド端の状態密度分布が分裂しながらバンド内に引き込まれていることを示し、フォトニック結晶内のアンダーソン局在を示唆している。 同一励起条件下において、SNOMによるレーザモードの空間プロファイルを観測した。通常のフォトニック結晶では励起領域内にガウス分布状に広がった周期的なプロッホモードが観測されるが、δ=10mmでは微小領域の局在が観測された。強度分布が空間的に指数関数的な減衰を持つことから、アンダーソン局在であることが確認された。 これまでにSNOMにより光のアンダーソン局在を観測した報告は無く、局在現象の直接的な証拠を示すものとして、本成果のインパクトは大きい。 アンダーソン局在モード内では新たな光子・電子間相互作用が生じるので、全く新しい光共振器概念の新学術の創出につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で初めて2次元スラブ構造のランダム・フォトニック結晶のレーザ発振特性について実験的に実証し、光のアンダーソン局在の直接的な観測に成功した。デバイスはInP/InAsP量子井戸構造を持つランダム・フォトニック結晶である。成果は国際会議で複数回発表し好評を得た。論文は投稿中である。Order to disorder optical phase transition in random photonic crystals」をApplied Physics Bに刊行し、注目された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画以上に本年度は進展した。最終年度はアンダーソン局在モード内では新たな光子・電子間相互作用が生じるので、全く新しい光共振器概念の新学術の創出に挑戦する。「Anderson localized modes in random photonic crystal lasers with two-dimensional glassy perturbation」を国際会議SPIE Photonics West 2012で発表し注目された。以上から、実験的に証拠を得たので、理論的な研究を基盤に最終年度は新学術の創出に挑戦したい。
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Research Products
(6 results)