2011 Fiscal Year Annual Research Report
トライボロジー特性を向上する表面柔軟構造体の設計と評価解析
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22656040
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
南 一郎 岩手大学, 工学部, 准教授 (00183111)
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Keywords | トライボロジー / 環境調和型潤滑剤 / アルミニウム合金 / トライボ化学 / 摩擦調整剤 / 合成炭化水素油 / 表面分析 / 潤滑機構 |
Research Abstract |
アルミニウム-ケイ素合金は軽量材料として機械摺動部への適応が期待されている.しかし従来のスチール材と比べて潤滑剤の選定が難しいとされ,この点の問題解決が望まれている.H22年度に実施した実験データを詳細に解析したところ,植物油由来の物質にアルミニウム-ケイ素合金の潤滑に効果を示す可能性が示唆された.そこで数種類のモデル物質を合成炭化水素油に添加して摩擦試験を行った.結果,植物油成分が部分的に分解して生じるオレイン酸グリセリドが,(1)なじみ期間を短縮すること,(2)なじみ期間後に安定した低摩擦を示すこと,(3)なじみ期間と定常状態の全体を通して低摩耗率を示すこと,を見いだした.表面分析の結果,(1)最表面では柔らかい金属が露出して摩擦を下げること,(2)表面近傍では合金組成が変化した硬い層を形成して摩耗を下げること,を明らかにした.ここで植物油由来の物質は潤滑層を形成する前駆体としてではなく,アルミニウム-ケイ素合金の表面を覆う硬い酸化物層(不動態層)を穏やかに除去して柔らかい金属層を露出する機構が推定された. なお,当初の計画ではH23年度は安定同位体元素を導入した柔軟構造前駆体を用いた解析を行う予定であった.しかし東日本大震災の影響で分析機器の調整目処が立たなかったので初年度に得られたデータを詳細に解析することに変更した.上述の結果は本研究の計画時には想定していなかった意外なメカニズムである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では摩擦面に介在する柔軟構造を潤滑剤として外部型供給することを想定していたが,トライボ材料に内在する構造をスムースに露出させることも有効であることを偶然に発見した.厳密には研究計画に沿うものではないが,意外な発見による性能向上のヒントは本研究課題の範疇であると理解する.
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度に得られた結果をヒントにして,硬質コーティング上に柔軟構造を形成する物質の探索に取り組む.上述のように意外な潤滑メカニズムを見いだしたので,これを鍵とした研究の可能性を探る探索実験を通して「基盤研究」などへの発展を試みる.
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