2010 Fiscal Year Annual Research Report
高温超電導ケーブルへの適用を目指した絶縁紙-氷複合絶縁システムの確立
Project/Area Number |
22656068
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
長尾 雅行 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30115612)
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Keywords | 極低温 / 紙-氷絶縁 / PPLP / 絶縁破壊 |
Research Abstract |
現在開発が進められている高温超電導ケーブルの課題の一つに電気絶縁がある.電気絶縁方式としては,従来技術の延長である絶縁紙-液体窒素複合絶縁系が用いられているが,気泡の発生により電気絶縁性能および長期信頼性の低下が懸念される.そこで,申請者らは極低温領域において優れた絶縁性能をもつ固体絶縁方式に着目し,室温では絶縁の天敵である水が低温では絶縁物である氷になることを利用して,電気的弱点である液体窒素を様々な利点を持つ氷に置き換えた絶縁紙-氷複合絶縁系を開発した.本研究では,この絶縁紙-氷複合絶縁系の電気絶縁特性を解明し,高温超電導ケーブルにおける新しい極低温電気絶縁構成の開発を促進することを目的とした. 極低温領域における多層絶縁紙(PPLP)自身の直流絶縁破壊特性は,絶縁紙単体より高い絶縁破壊特性を有していることがわかった.これは,絶縁紙内の微小空隙で発生するストリーマ放電が,セルロース層構造により分散されるためと考えられる.さらに,多層絶縁紙における直流正極性の絶縁破壊特性は,直流負極性の絶縁破壊特性よりも高いことがわかった.これには以下に示すように極性における絶縁破壊機構の違いが寄与していると考えられた.負極性課電時においては,負電荷が絶縁紙内に蓄積し,実効厚さを薄くすることで絶縁破壊特性が低下したと考えられるが,正極性課電時には,正極性ストリーマ放電が負極性ストリーマ放電よりも進展しやすいと考えれば,電荷の蓄積が起こる前にストリーマ放電が進展し,セルロース層構造によるストリーマ放電分散効果が効果的に働き,絶縁破壊特性を向上したと思われた.
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