Research Abstract |
この研究は,従来のものとは異なる一般化された対数,すなわちアルファ対数を利用して,尤度を最適化する確率的情報処理アルゴリズムを高速化することを目的としている.このとき,主な対象とするものは,隠れマルコフアルゴリズム(HMM)と独立成分分析アルゴリズム(ICA)である.これらは,離散記号系列と連続記号系列の両方に対処でき,音声や画像の分析と合成,生命情報配列の特定部位検出,そしてオペレーティンググシステムの以上検出など,物理的実体を横断する広範な応用分野を有している.平成20年度においては次のような成果を得ている. [高速HMMに関する成果] 隠れマルコフモデルの推定アルゴリズムについて,その母体であるアルファEMアルゴリズムからの数式的導出に成功した.これは,主に離散記号からなる単一配列についてである.これを実世界で役に立つソフトウェアとして実現するには,さらにスケーリングが必要であり,これも数式的に導出した.これにより,エルゴード的モデルに対しては2倍以上の高速化を達成した.他のモデルについては,次年度においてソフトウェア化する.なお,この研究において大事なことは,得られたアルゴリズム,すなわちアルファHMM推定アルゴリズムは,1970年代に開発された通常のHMM推定アルゴリズムを特例として含む一般化されたものとなっていることである.この成果に対して,特許出願を行った. [高速ICAに関する成果] アルファ対数の考えに基づいて,新たな高速アルゴリズム,すなわち過去情報を利用したRapidICAを実現した.これは,現在デファクトスタンダードとなっているFastICAを打ち破るものであり,これに対しても特許出願を行った.
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