2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22656095
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 裕 京都大学, 情報学研究科, 教授 (70115963)
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Keywords | 数値解析 / サンプル値制御理論 / デジタルフィルタ / 微分方程式の数値解法 |
Research Abstract |
本年は,サンプル値制御理論を用いたフィルタを用いて微分方程式の差分解法のシミュレーションの検討から始めた.その結果,通常の基本的な線型集中定数系についてはまずまずの結果が得られたものの,系の時定数に大幅な開きがある,いわゆるスティッフな系や大きな入力の入る系などについては必ずしも期待した結果が得られないことが明らかになりつつある. また,研究中に明らかとなった課題として,H∞評価関数の最適化を行うサンプル値ディジタルフィルタでは,定常特性が重視される結果,トランジェントの特性において従来法を必ずしも上回るとは言えないことが見出された.これは当初予想されなかった結果であるが,評価関数の修正等を含めて結果の改良を目指す予定である.これらは24年度の検討課題として取り組む予定としている. その他今年度の成果の主なものとして,入力信号にもともと位相遅れ歪が存在していた場合,それをディジタル処理によって取り除くことが可能であることが見出されたことがある.これは音響,音声復元においてことに有効であり,復元逆問題の解とも見なせることから,今後の逆問題への展開が期待される.これは具体的には,観測過程において仮想的に位相遅れ歪が存在するものとして,設計フィルタにその逆特性を持たせることによって,中間周波数から高域周波数に対して,通常存在する位相歪を低減するフィルタの設計を可能とするもので,音響,音声の逆復元には非常に有効である.次年度以降はこれの画像処理や一般逆問題への展開を検討したい.これらの成果の画像,動画処理においては一定の成果が得られており,24年度において一層の展開を指向したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで常微分方程式の数値解法についてサンプル値制御理論による解法を検討してきた.それによって,線形定常の常微分方程式については一応の制度の解が得られることが明らかとなったが,一方で,短時間の立ち上がり特性については必ずしも従来手法に対して優位性を確認できない結果となった.これは当初予想に反する結果であるが,H∞制御理論による設計フィルタが定常特性を重点的に最適化するためではないかと考えられる.これについては引き続き検討を加える.その他,ディジタル信号処理への応用として,ソース取得時に発生する位相遅れをサンプル値フィルタによって補正し,より良好な結果を得ることが可能となった.これは今後引き続き検討するべき問題である
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Strategy for Future Research Activity |
上記課題に対しては,1)評価関数の見直し(トランジェント特性により重みが掛かるように考慮する),2)誤差フィードバック項を考慮することによって,本来の制御理論による数値解析学への展開をより有効なものとしたい.また位相補正の可能性は帯域ごとの誤差の制御の観点から観ても興味あるものであり,これについて信号処理への応用も踏まえつつ一層の展開を図る予定である.
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Research Products
(14 results)