Research Abstract |
本研究では,理論的には全歩行者から取得可能な行動や表情といった外形的な特徴に着目し,歩行者の意識と歩行者の外形的な特徴の関係を分析する中で,歩行者空間の評価指標を開発する事を目的としている.本年度は,歩行者の心理と表情,しぐさの関係について,次の方法により,実験的解明を行った. 実際に歩行空間の改善・創出の取り組みが行われている道路を対象として,皮膚電位計を装着した被験者を通行させた.対象道路では,同じ道路で歩行者天国実施時と自動車通行時の比較ができる状況にあったため,両方の状態での歩行者の心理および表情,しぐさの比較分析を行った.このとき,歩行者の心理状態を,皮膚電位計で計測されるストレス量から計測し,一方,歩行中の表情,しぐさについて,ビデオ撮影によって詳細に把握し,自動車の走行条件ごとに,心理状態との関係性を分析した.また,これらの調査において,スマイルシャッター付カメラによる「笑顔率」の評価を行った.対象道路を歩行する歩行者を動画で記録し,それをプロジェクターに投影した映像をスマイルシャッター付カメラで撮影し,検出された顔の数に対する笑顔の率を,シャッターの数を用いて算出した.そして,この率を自動車の通行条件との関係において分析した. これらの調査から,歩行者に高い評価を得ている車が通行しない空間において,歩行者の行動,及び表情が,車の通行する空間とは異なることが観測された.また,スマイルシャッター機能を用いて外形的特徴の差異を簡易に計測する手法の適用可能性が示された.以上の結果から,歩行者の外形的特徴が歩行空間の指標となる可能性が示唆された.
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