2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22656136
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土居 義岳 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 教授 (00227696)
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Keywords | パリ外国宣教会 / ド・ロ神父 / 教会建築 / ロマネスク様式 / ゴシック様式 |
Research Abstract |
本年度は19世紀末期長崎にて教会堂建設に携わったド・ロ神父について調査、資料収集をおこなった。まずカン市とその周辺部で資料収集などをおこなった。また司教区内の教会堂視察をおこなった。さらにパリ市内にあるパリ外国宣教会のアーカイブで、ド・ロ神父が長崎からパリの本部に書き送った報告書を閲覧し、コピーをとった。さらにパリ外国宣教会の付属図書館の司書・研究者らとコンタクトをとり、関連図書や資料を検索し、共同で読み込み、意見交換をおこなった。さらにパリ芸術専門図書館にて、ド・ロ神父が参考としたと推察される19世紀教会堂の工事報告書を閲覧し、コピーをとった。ド・ロ神父による報告書は、外国人留学生の助力もえて、手稿を解読してワープロ入力する作業を進めた。以上から、 (1)ド・ロ神父が神学校にて学んだ地域の教会堂は、ロマネスク様式は少なく、ほとんどゴシック様式であり、古典主義様式もきわめて少ないことが判明した。ド・ロ神父が長崎でおもにゴシック様式で建設したことの有力な背景であると考えられる。 (2)いっぽうでパリ滞在中にどのように教会建築学を学んだかを示す証拠はほとんどなく、新証拠が発見される可能性がすくないことが、付属図書館司書らとの議論から判断される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宣教師が渡日直前にパリで同時代の教会堂建築を学んだという直接的証拠はない可能性が大きいことが判明したが、宣教師が学んだ教会建築学のテキストを発見し、出生地をふくむ同時代の教会堂建設活動環境が具体的にあきらかになるなど、成果も大きかった。
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Strategy for Future Research Activity |
長崎の教会堂と、同時代パリの教会堂との様式的類似性は、顕著ではあるが、直接の照明証拠はない可能性があり、その場合はやはり教会堂そのものが根拠であるので、様式、形態の分析を再緻密化しなければならない。また19世紀フランスの教会建築の建設動向といったより広い枠組みを明らかにして、そのなかに長崎の教会堂を位置づけるという方向をとらねばならない。
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