2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ニッケル表面のプロトン伝導性の発現とそのエレクトロクロミック素子への応用
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22656142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
喜多 浩之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (00343145)
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Keywords | セラミックス / 先端機能デバイス / 表面界面物性 / エレクトロクロミック / 欠陥準位 |
Research Abstract |
Ta_2O_5は,水を取り込んで水酸化すると低温でも局所的にプロトン伝導性を示すことが知られている酸化物である。母体が電子絶縁性に優れた酸化物であるため,欠陥構造の制御によって全酸化物型のECセルの電解質として期待できる。しかしエレクトロクロミック(EC)セルの各層を気相法で成膜するには,ドライプロセスのみで効率よくプロトンをTa_2O_5中へ導入する方法が不可欠である。そこでTa_2O_5のRFスパッタリングをアルゴン/水素混合ガスを用いて行うことによる,Ta_2O_5内部への高濃度水素の導入可能性,及びそのプロトン伝導性について検討した。水素/アルゴン比を0%~5%で変えてTa_2O_5の成膜を行ったところ,FT-IRからは2500Cm^<-1>~3500Cm^<-1>の範囲でブロードな吸収ピークがみられ,-OH基が導入されていることがわかった。また,このピークは水素/アルゴン比と強い相関を示し,RFプラズマ中で活性化した水素が膜へ取り込まれたことが示唆された。成膜後に熱処理を加えたところ,400℃以上ではFT-IRのピークはほぼ消滅したが,200℃では-OHを膜中に残すことが可能であった。加熱雰囲気中に酸素または水素を加えてその影響をみたところ,特に水素ではFT-IRのピークがむしろ増大したことから膜中の欠陥構造中にさらに水素が取り込まれたことが示唆された。このように成膜と熱処理によって水素を導入した膜を,WO_3と積層してハーフセルとし,ITO電極で挟んでから電圧を印加したところ,数%の透過率の変化が観察された。即ち,作成したTa_2O_5膜はプロトン伝導性を僅かながら示していると考えられる。一方,インピーダンス解析の結果,熱処理を行わない場合よりも電子伝導は抑制できたが,まだプロトン伝導よりも電子伝導が優勢であることが示され,さらに電子伝導を抑制することが次年度の課題として残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・当初に計画したナノ構造が狙い通りに機能するには至らず,手法を再検討したこと ・今年度から実施予定であったECセル作成については,まだ着手したばかりであること
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に計画していた研究項目のうち,イオン伝導性を発揮しながら電子伝導を抑制した構造の作成での困難が多くある。当初想定していたナノ構造ではイオン伝導性を与えることはできても,電子伝導の抑制は本質的に困難であると判断した。これは導入される欠陥構造が電子伝導を直接的に増大させてしまうためである。一方,昨年度に見出されたように,可動イオンを高密度に挿入して形成された酸化物アモルファス構造の材料設計が有望な手法となる可能性がある。今後,この形成法を主軸として,実際のECセル作成を行って当初課題の目的達成を目指す。
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Research Products
(6 results)