2010 Fiscal Year Annual Research Report
ガラスの熱物性に対する混合同位体効果の解明と新規低融点ガラスの設計
Project/Area Number |
22656145
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
松岡 純 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (20238984)
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Keywords | ガラス / 同位体 / ホウ素 / 熱拡散率 / フォノン / 平均自由行程 / 混合同位体効果 / 熱伝導率 |
Research Abstract |
ホウ素を含む酸化物ガラスとして最も組成の単純なB_2O_3ガラスについて,室温での熱伝導率,およびそれと関係するフォノンの平均自由行程,熱拡散率,密度,弾性率,比熱についてのホウ素の同位体効果を研究した。H_3^<10>BO_3とH_3^<11>BO_3を出発原料とし,ホウ素の平均質量数が10.0~11.0のガラスを,白金坩堝を用いて原料を1200℃で溶融し,予熱した鉄板上に流しだした後に300℃で1.5hアニールすることで作製した。この試料を,片面に黒色の光吸収膜,反対面に熱電対を付けた板状とし,真空中で連続的に光を照射して温度上昇曲線を測定することで熱拡散率を求めた。得られた熱拡散率と比熱および密度から熱伝導率を求め,また弾性率と密度から求めた音速と熱拡散率からフォノンの平均自由行程を求めた。熱拡散率は^<10>Bのみのガラスと^<11>Bのみのガラスでは前者の方がやや高いものの実験誤差範囲内で等しくなり,^<10>Bと^<11>Bを等量含むガラスで極小値をとった。またヤング率とフォノンの平均自由行程もこれと同じ組成依存性を示した。同位体の混合による平均自由行程の低下は約3.5%,ヤング率の低下は約2.5%であった。以前に本研究者らは同位体の混合がガラス転移の活性化エネルギーを上昇させることを見出しており,同位体の混合によるヤング率の低下は,同位体比によらず同じアニール工程でガラスを作製したため,同位体を混合したガラスの方がより高温で結合の弱い状態が凍結されたことが原因と考えられる。他方で同位体混合による平均自由行程の低下は,二種類の原子の質量差により固有振動の振動数が異なるためフォノンの散乱が大きくなること,あるいは同位体の混合でガラス転移の際により高温の乱れた構造が凍結されたことが原因と考えられる。
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