2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22656152
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉山 和正 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40196762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志村 玲子 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90420009)
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Keywords | amorphous metals |
Research Abstract |
強度、低ヤング率、耐食性など優れた特性を示す金属ガラスは、多くの産業分野への応用が期待されている。金属ガラスの物理化学的特性の発現メカニズムを解明するため、国内外を問わず、ガラス構造に存在する化学的および幾何学的短範囲規則性に関する数多くの構造的研究が行われてきた。しかし、原子配列の特徴を“3次元的”に議論できる実験的報告はほとんど見受けられず、結果として金属結晶材料と異なる金属ガラスの特性を議論するに十分な構造情報を取得するに至っていない。 本研究は、Zr基金属ガラスに存在する特殊構造を、研究代表者が得意とする環境構造RMC解析によって解明し、金属ガラスのすぐれた機能の発現メカニズムを原子レベルで議論することを目的とする。また、金属ガラスとの関連性の上で、金属ガラスにその存在が指摘されている正二十面体クラスターを含有する“近似結晶”の構造解析を進めることも、本研究のもう一つの目的である。 本年度は、初年度実施した2元系Zr系金属ガラス近似結晶相の構造解析を発展させ、準結晶を晶出する非晶質金属の特殊構造に関する議論を進めた。さらに、Zr-Cu-Al系金属ガラス、さらにをPを含有する金属ガラスの構造解析も進展させることができた。特に新しい知見として、Zr-Al-Cu系金属ガラスのZrおよびCu周囲には当初予想された正二十面体構造が存在するが、ガラス化に重要な役割を果たしていると考えられていたAl周囲には、このような特殊構造が存在しないことを明らかにすることができた。このようなZr-Al-Cu系およびZr-Ni-Al系の実験結果の一部は、スペインにて開催されたIUCR国際会議にて発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
準結晶を晶出しないZr50Cu50金属ガラスにおいても、20面体構造の存在頻度が高いことを考慮すると、金属ガラスに存在する20面体構造は準結晶の晶出よりもむしろガラス構造に特徴的な構造単位と考えることができる。そして、金属ガラスに関連の深い準結晶の晶出にはこの短距離秩序構造のほかに何らかの別の要素が深くかかわっていると考えることができる。本研究で実施した準結晶を晶出するZr-Pd系非晶質合金のAXS-RMC解析の結果は、Zr-Pd相関距離にはGoldshcmidt半径よりもかなり短いものが頻繁に存在し、低温の熱処理によって容易に破壊されないような結合性が強い化学的短距離秩序構造を示唆している。すなわち、金属ガラス特有の幾何学的短距離秩序構造(20面体構造)と結合性の強い局所構造単位の両者が共存したときに、準結晶を結晶化させる特殊なプロセスをとるのではないかと結論できた。Zr-Cu系金属ガラスの場合、強い結合が存在しないため熱処理に伴ってより安定な通常の局所構造単位に容易に変化してしまうのであろう。今後は、この考察が準結晶を晶出する非晶質金属に成立するかも検証していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究グループは、金属ガラスには、通常の金属結晶には存在しない特殊な中距離領域構造が存在すると考えている。そのような中距離領域構造は、① 金属ガラス組成近傍にある結晶相の探索とその結晶構造解析。② 環境構造RMC解析による金属ガラスの3次元構造モデルの導出。以上2つの研究タスクの完了によってはじめて解明できると考えている。本研究プロジェクトを完遂するため、初年度は2元系Zr系金属ガラス、本年度は準結晶を晶出する非晶質合金と3元系金属ガラスの構造解析を推進してきた。次年度は、最終年度であるため、本研究分野で最も注目されている金属ガラスに焦点をしぼり、金属をガラス化させるメカニズムの解明に導くことができる基礎構造データの集積に努める計画である。また、Zr系とはことなるPd系においても解析を進め、より広い化学組成の金属ガラスに適用可能な構造規範を提唱したいと考えている。
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Research Products
(7 results)