2010 Fiscal Year Annual Research Report
水素ダイアグラムの提唱-水素化物中での水素の存在状態は如何に遷移するか
Project/Area Number |
22656153
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
折茂 慎一 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40284129)
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Keywords | 水素化物 / 水素 / 原子 / 共有結合 / イオン / 金属間化合物 / 水素貯蔵材料 / 水素ダイアグラム |
Research Abstract |
水素化物中の水素は、原子性、共有結合性、陰・陽イオン性など、多彩な結合状態を示すことが知られているが、これらの存在状態間の遷移に関する系統的な研究報告は無い。そこで本研究では、金属間化合物CaPdをヘリウムグローブボックス中での高周波溶解により作製して、粉末X線・中性子回折測定、水素定量分析、水素力一組成等温線(PCT)測定などを用いて、水素の存在状態間の遷移の観点からその水素化特性を実験的に解析した。その結果、広い温度域で特異な水素化・脱水素化反応が進行することが判明した。すなわち、273-473Kの低温域においては、共有結合性の水素を有するCaPdH_<2.0>(三方晶)に対してさらに格子間水素が侵入してCaPdH_<2.4>(擬立方晶)が生成することで可逆的な水素化・脱水素化反応が進行する。より高温域の473-773Kにおいては、CaPdH_2と1/2CaPd_2+1/2CaH_2との間で相分解-再結合が生じることで可逆的な水素化・脱水素化反応が進行する。また最も高温域の873K付近においては、1/2CaPd_2+1/2CaH_2が金属間化合物CaPdに戻る(再生する)。このように、金属間化合物CaPdでは、温度域に応じた水素の存在状態間の遷移により、水素の格子間侵入および相分解-再結合という多段(multimode)での脱水素化・再水素化反応が連続的に進行する。水素の存在状態間の遷移に関するこの性質は、今後、水素ダイアグラムを用いて広い温度域で利用できる新たな水素貯蔵材料を設計するうえできわめて重要となる。
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Research Products
(5 results)