Research Abstract |
本研究の目的は,元素の物性値から触媒活性を推定する手法を確立し,触媒設計を自動化することである.従来の触媒科学では新規な触媒を見出す方法論は確立しておらず,主要な触媒は偶然または絨毯爆撃的手法で見出されている.例えば触媒活性を決定する要因は様々であり,しかもそれらが複雑に関係しあっているため,活性の予測は困難である.しかし筆者は,様々な元素を添加した触媒を調製し,それらの物性値と触媒活性の関係を表す回帰モデルを人工ニューラルネットワークで構築した結果,様々な触媒反応で,それまで知られていない最適添加物の発見に成功している.本研究では上記手法において,経験や勘を必要とする解析作業の部分をさらに改良し,解析の自動化を図った.さらにこの手法を用いて,エタノールからのガソリン生成反応(ETG反応)に高活性を示す触媒の活性向上・寿命向上をはかった. 平成22年度にカーネル多変量解析が回帰モデル構築に優れていることを見出しているため,ZSM-5系触媒に関する既往のデータをカーネル多変量解析により解析したところ,Mn, B, Sn, Si, Ba, P担持が有効なことが推定された.そこで今年度はまず,これらを担持したETG反応を実施したところ既往の研究には含まれていなかったBが活性向上に有効なことを見出した.さらにこれらの触蝶の反応後の炭素含有量から触媒寿命を推定したところ,Biが寿命向上に有効であることが推定され,その結果は実験的にも実証された. 以上の「回帰モデル作成→推定→実証」のサイクルで,実験者の経験知を用いるステップはなかった.従って,カーネル多変量解析と元素物性値を用いれば,既往のデータを出発点にして最小限度の実験を追加することで新規な触媒が自動的に探索されうることが示された.
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