2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化チタンナノ粒子に固定するβ線放出核種の有効利用に関する研究
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22656186
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
三好 弘一 徳島大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (90229906)
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Keywords | 酸化チタン / ナノ粒子 / トリチウム / β線 / 光応答 / チオニン / ナイルブルー / 光酸化電流 |
Research Abstract |
研究目的に従って、トリチウムを酸化チタンナノ粒子に固定することで観測された光酸化電流の増大機構を検討した。放射能6.9kBqとβ線の平均エネルギー5keVから計算される電流値は1.8pAであり、TiのK-edgeの励起エネルギー4.965keVを考慮すると、生じる光酸化電流値は1.1fAとなり、光酸化電流の増大はβ線のエネルギーにより生じる電流ではない事がわかった。一方、酸化チタン粒子の吸収スペクトルから、トリチウムを固定することで400nm付近に表面準位が形成していることがわかった。この表面準位の光励起により光酸化電流が増大したと考えられた。このため、当初の研究実施計画から酸化還元電位既知の色素を用いた表面準位の電位を調べる計画へと変更した。放射能濃度(57Bq,1.1kBq,5.5kBq/0.1ml)と粒子径の異なる(390nm,470nm,及び800nm以上吸収端を示す)酸化チタン粒子を調製した。トリチウム固定酸化チタンナノ粒子(6.9kBq/0.2ml)修飾電極を使用して設定電位に対する光酸化電流値からβ線により生成した表面準位と思われる電位が、-0.29VvsAg/AgCl(pH7)と推定された。チオニンをトリチウム固定酸化チタン粒子(11kBq/0.2ml)修飾電極に塗布し、光酸化電流を測定すると、2.7μAから5.8μAへと増大した。放射能の異なるβ線によって観測される光電流値を測定すると、2.2kBqで0.5μA,11kBqで2pAへと放射能に依存して光酸化電流が増大することがわかった。(意義と重要性)トリチウム固定酸化チタン修飾電極において観測された光酸化電流の増大機構に表面準位が関係する事を明らかにできたこと、放射能に依存して光酸化電流が増加したことは、本研究課題であるβ線放出核種の有効利用にとって重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である酸化還元電位既知の色素を用いたトリチウムβ線の酸化チタン粒子上での電位決定から、その光酸化電流増大機構の解明へと計画を変更したが、トリチウムを固定した酸化チタン粒子の吸収スペクトルの測定から、400nm付近に表面準位が形成すること、酸化還元電位の低い色素の吸着によって光酸化電流が増大したこと、放射能に依存して光酸化電流が増大することを明らかにでき、トリチウム固定による光酸化電流増大機構を解明できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
トリチウムを固定した酸化チタン粒子修飾電極において放射能に依存して光酸化電流が増大すること、トリチウムを固定することにより表面準位が形成すること、を確認できたことから、平成24年度の研究計画は、その機構を明らかにするために、表面準位の形成について、放射能やエネルギーの違いによる詳細な検討を行い、その電位を推定する。最終目的であるβ線放出核種の有効利用として、β線放出核種が従来の犠牲剤の代わりにどの程度使用できるかについてまとめる。
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Research Products
(1 results)