Research Abstract |
今年度は金属と昆虫外皮を用いて表面の粗さと土の水分量の違いが付着特性に影響を与えることに注目して実験的に検討した.はじめに粗さとぬれ角を測定し,それぞれの関係について検討した.次に金属・昆虫外皮と粘性土の付着力を測定する実験装置を作製し,土の水分量の違いによる付着性について議論した.本年度得られた成果は以下の通りである. (1)粗さとぬれ角の関係 金属は鋼鉄,銅,アルミニウム,SUS304、SUS420J2の5種類を,昆虫はカブトムシ,ダンゴムシ,コガネムシ,フンコロガシの4種類を対象とした.なお,SUS420J2(マルテンサイト系)は表面粗さを4段階変えて検討した.その理由は,建設機械は一般にマルテンサイト系鋼鉄が使われており,水を使う付着実験に錆びにくいマルテンサイト系金属を採用したほうが管理しやすいと考えたからである.測定結果より,金属表面が粗くなるほどぬれ角は小さくなる,つまり濡れやすいことが分かった.一方,昆虫外皮は凸構造(フンコロガシ以外)であり,ぬれ角は全て90度以上(疎水性)であった.特にカブトムシは最も濡れにくい構造を有していることが確認された. (2)付着実験 本実験では先の測定結果を考慮してSUS420J2とカブトムシの外皮を用いた.試料に笠岡粘土(塑性限界23.8%,液性限界53.4%)を使用し,含水比は30%,40%,50%に設定して付着力と付着量を測定した.SUS420J2では含水比が大きくなるほど付着力と付着量は増加した.特に含水比50%では表面粗さの影響が大きくなり,ぬれ角が大きくなるにつれて付着力は増え,付着量は減少する傾向であった.一方,カブトムシの付着力は微小のため今回使ったロードセルでは測定できなかったが,含水比が大きいほど付着量は増える結果が得られた.ただし,今回の実験結果にばらつきが見られたことから,実験装置を改良して実験精度を向上する必要がある.
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