Research Abstract |
放射性廃棄物の地層処分システムにおける廃棄体(ガラス固化体)の定置間隔は,地下水が飽和されていることを前提に,廃棄体周囲の温度が地下水の沸騰しない条件に設計されている。しかし,処分場面積を抑え,限られた処分場を最大限に活用するためには,処分場管理期間(100年以上)における通気に起因した不飽和帯(地下水により飽和していない領域)の形成およびその再冠水までの廃棄体発熱量の減衰を考慮した設計を必要とする。本研究では,不飽和帯の再冠水過程を定量化し,より精緻な廃棄体間隔を提示することを目的として,本年度は,固相を伴う系において水相への気相の溶存速度を求め,その値から液相に溶存する際の気相の総括物質移動係数を評価した。 実験では地層内の流路を模擬するために充填層およびマイクロモックアップ装置を用いた。ここで充填粒子はケイ砂(粒径0.5mm,0.25mm)およびガラス粒子(粒径1.0mm,0.5mm,0.1mm)である。また,マイクロモックアップ装置は,岩石試料にテフロンシートを挟み1mm未満の亀裂幅の流路を再現するものであり,試料として花崗岩(鏡面研磨したものと非研磨のもの)を用意した。実験の手順は,まず,気相(二酸化炭素)を流動系に封入し,所定水頭のもとに蒸留水を連続的に注入した。そして,所定時間毎の出口流量から浸透性の変化を把握し,また,pHの変化から気相の溶存速度を定量化した。その結果,浸透性の回復に比較してpHの変化は遅く,いずれの流動系の場合も総括物質移動係数は1.0×10^<-6>m/s~1.0×1.0^<-5>m/sの範囲にあった。一方,固相のない系においては最大で1.0×10^<-3>m/sであった。これらの違いは,固相による液相の混合状態の抑制,固相の不均一性に伴う気液界面の形成の違いに依るものであり,それらが再冠水期間に大きく影響することを示唆した。
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