2011 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザー誘起衝撃力による単一細胞刺激と活性化機構の解析
Project/Area Number |
22657041
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
細川 陽一郎 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特任准教授 (20448088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 彰彦 近畿大学, 医学部, 教授 (80273647)
古野 忠秀 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (80254308)
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Keywords | フェムト秒レーザー / 衝撃力 / 細胞 / カルシウムイオン / イメージング |
Research Abstract |
高強度の近赤外フェムト秒レーザー光を顕微鏡下で細胞培養液に集光すると、効率的な多光子吸収により集光点で爆発現象が引き起こされる。この爆発現象により発生する衝撃力は、ミクロンオーダーの領域に局在するため、1細胞の局所領域に機械刺激を加えられる。本研究では、この局所的な機械刺激を単一の細胞に加えた時に引き起こされる細胞活性の変化を調べ、細胞の機械刺激応答を1細胞レベルで明らかにする新しい解析手法の確立を目指している。本年度、高強度のフェムト秒レーザーを照射している中でも観察することが可能な共焦点蛍光顕微鏡システムを開発した。その結果、前年度に構築したカルシウムインディケーター(Fluo-8)を添加した神経細胞や筋芽細胞などの培養動物細胞の蛍光イメージを秒速1コマ程度の速度で撮影しながら、その中で標的とする細胞にフェムト秒レーザー誘起衝撃力を付加し、その蛍光強度の時間変化を調べることに成功した。分担研究者である伊藤教授らは、マウスから摘出した初代培養神経細胞とマスト細胞を共培養した系を用いて上記システムによる実験を実施した。その結果、神経細胞を衝撃力により刺激すると、その直後に神経細胞のカルシウムイオン濃度が増加し、さらにそのシグナルがマスト細胞に伝達し、マスト細胞のカルシウムイオン濃度が増加する挙動が観察された。この結果は、培養皿上に無秩序に構成された神経細胞とマスト細胞間のコミュニケーションネットワークにおいて、神経のみを刺激し、神経細胞とのコミュニケーションのみでマスト細胞を1細胞レベルで刺激する新しい解析手法を確立したと位置づけられる。さらに、分担研究者である古野忠秀准教授らにより、Transient receptor potential channels(TRP channels)を抑制したマウス筋芽細胞(C2C12)が開発された。TRP channelsは、機械刺激により応答し、カルシウムイオンを細胞外から取り込む受容チャネルとして知られている。現在、正常細胞と数種類のTRPchannelsを抑制した細胞にFluo-8を添加し、上記のレーザー照射・観察システムを用いて、その挙動を明らかにしようとしている。
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