2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22657049
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岩楯 好昭 山口大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40298170)
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Keywords | メタクロナールウェーブ / 繊毛 / 鞭毛 / 細胞運動 / カルシウム / ケイジド化合物 / 顕微注射 |
Research Abstract |
気管や胚、ゾウリムシなどの単細胞生物は多数の繊毛を持つ。繊毛は1本1本が独立して運動しているにも関わらず、集団として見ると全繊毛は一糸乱れぬ秩序を保ちながら同じ方向に動く(メタクロナールウェーブ)。この秩序の形成には外部からの制御は不要で、繊毛同士の相互作用によって自律的に形成される。本申請では、繊毛集団がメタクロナールウェーブを形成するメカニズムを、ゾウリムシを材料に、高度な顕微鏡観察と数理モデルのシミュレーションを用いて解明する。 ゾウリムシは細胞全体が多数の繊毛の覆われており、メタクロナールウェーブは細胞の前端から後端に向かって進む。つまり、隣り合う繊毛打の位相はほんの少しずつずれて、繊毛打は前から後ろへ伝播していく。隣り合う繊毛同士がぶつかり合う力学的な相互作用が繊毛間のシグナルとして機能してメタクロナールウェブが実現しているなら、一部の繊毛の運動を強制的に乱せばメタクロナールウェブはその箇所を乗り越えられないはずである。 ゾウリムシの繊毛は繊毛内部のカルシウムイオン濃度の上昇によって、その有効打方向を逆転させることが知られている。ところで、ケイジドカルシウムは紫外線のエネルギーを吸収してカルシウムイオンを放出する分子試薬である。従ってケイジドカルシウムを内部に導入されたゾウリムシ細胞の一部の繊毛に紫外線を照射すれば、紫外線の当たった繊毛のみの運動方向を逆転させることが出来る。ゾウリムシ細胞では細胞内への試薬の導入は顕微注射に頼らざるを得ない。 本年度は、倒立顕微鏡に顕微注射及びケイジド化合物実験系を作成し、実際にゾウリムシ細胞にケイジド化合物を導入し、一部の繊毛のみを逆転させ、細胞全体の繊毛打を観察することに成功した。現在、得られた動画から、メタクロナールウェーブの伝搬の様子を解析中である。
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