2011 Fiscal Year Annual Research Report
選択的スプライシングを制御する核内微小時空間場のバイオプローブを用いた解析
Project/Area Number |
22657050
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷 時雄 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80197516)
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Keywords | 核スペックル / 核 / 選択的スプライシング / 放線菌 / スプライシング因子 / mRNA |
Research Abstract |
真核細胞の核内は、多数の核内構造体によって高度に区画化された空間である。遺伝子の転写やスプライシングなどの反応は、核スペックルやPMLボディなどの核内構造体によって形成される微小核内空間(場)で密接に連携して進行する。本研究は、これらの核内構造体構築に影響を与える、放線菌培養上清から分離した天然阻害化合物をバイオロジカルプローブに用いて、核内構造体を基盤に様々な因子が出入りして形成される微小空間場によって、転写後遺伝子発現が如何に制御されるか、その時空間的な場による制御機構を解明することを目的に行った。核内構造体(核スペックル)を肥大化する化合物として同定したtoyocamycinは、スプライシング因子のリン酸化kinaseを抑制することにより、核スペックルへのスプライシング因子の集積を促進し肥大化をもたらすことが示された。一方、核スペックルを分散化させるtubercidinは、スプライシング因子の核スペックル局在に必須なnon-coding RNA (MALAT1 RNA)に取り込まれその分解を促進することで、核スペックルからのスプライシング因子SF2の分散化を惹起している可能性が明らかとなった。また、これら二種類の阻害化合物処理によって引き起こされる核スペックルの変化(集積と分散化)による選択的スプライシングへの影響を解析し、Clk遺伝子においては、核スペックルへのスプライシング因子の集積(toyocamycin処理)によってexon inclusionが、核スペックルからのスプライシング因子分散(核質濃度上昇、tubercidin処理)によって、exon skippingが引き起こされることが示唆された。さらに、exon array解析を行い、ゲノムワイドにこれら化合物が選択的スプライシングに与える影響を解明することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の解明目的とした核スペックルの形成と局在するスプライシング因子の動態変化(集積と分散)が選択的スプライシング反応に及ぼす影響を、核スペックルの形成に関して正反対の効果を示す化合物toyocamycinとtubercidinを用いて、分子レベルで解明できたので区分(2)の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、核スペックルの形成変化がゲノム全体の選択的スプライシングに及ぼす影響について、exon arrayを用いて解析している。toyocamycinとtubercidinの処理によって、変動する遺伝子群(イントロン群)を抽出できつつあるので、更に解析を進めたい。また、化合物処理によって変動を示すいくつかの代表的遺伝子について、レポーターミニ遺伝子の作成を進め、toyocamycinとtubercidinによって影響を受ける選択的スプライシングに関わるpre-mRNA上のシス塩基配列の同定へと研究を展開する予定である。
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