2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト網膜のメラノプシンの遺伝子多型およびその機能的役割の解明
Project/Area Number |
22657063
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00292376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥田 昌子 国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所, 室長 (20333354)
辻村 誠一 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (10381154)
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Keywords | メラノプシン / 一塩基多型 / 光 / 照度 / メラトニン / 瞳孔 |
Research Abstract |
ヒトの網膜には、メラノプシンという光感受性物質を含む神経節細胞(mRGC)があり、生体リズムの光同調や瞳孔の対光反応などの光の非視覚的作用に寄与している。このメラノプシンの遺伝子(OPN4)にはいくつかの一塩基多型(SNP)があるが、光に対する生理反応との関係については知られていない。我々は1年目の研究で、アミノ酸置換を引き起こす領域の一塩基多型(rs107961)と瞳孔の対光反応に関連があることを明らかにした。そこで、2年目の実験では、瞳孔以外の指標として、光によるメラトニンの分泌抑制に着目した。照明条件は10001xと40001xの2条件であった。被験者は10001x条件では、T/T遺伝子型群が23名、C/T遺伝子型群が16名であった。40001x条件では、T/T遺伝子型群が16名、C/T遺伝子型群が16名であった。実験当日は夜間にDimlight(<15lux)の部屋で4時間過ごし、その後2時間の光曝露を行った。実験中は1時間ごとに唾液採取を行った。唾液中のメラトニン濃度の測定はRIA法で行った。照度(2水準)、時刻(3水準)、遺伝子型(2水準)を要因とする3元配置の分散分析を行った結果、照度の主効果(p<0.001)と時刻の主効果(p<0.001)が認められたが、遺伝子型の主効果は見られなかった。また、どの要因間の交互作用も認められなかった。照度の影響について、メラトニン抑制率は10001x条件より40001x条件で有意に大きかった。時刻の影響は、曝露時間が長いほどメラトニンの抑制率は大きく、曝露3時間後で最も大きかった。本実験で、遺伝子型の違いがメラトニンの光抑制には認められにくいことが分かった。メラトニンの抑制率は個体差が大きく、日中の光曝露履歴などの影響も受けることが知られている。また今回の実験ではC/C型の被験者を確保することができなかった。これらの点を考慮した研究が今後必要であることがわかった。
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