2010 Fiscal Year Annual Research Report
イネいもち病菌非病原力遺伝子はなぜ彷徨するか-メヒシバ菌貯蔵庫仮説の検証
Project/Area Number |
22658014
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土佐 幸雄 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20172158)
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Keywords | Magnaporthe oryzae / Pricularia oryzae / Avirulence gene / Rice / Blast / crabgrass |
Research Abstract |
本研究の立案時点で、AVR-Piaがいもち病菌種間を水平移動した証拠を見出していた。そこでまず、他の非病原力遺伝子にも、水平移動の痕跡がないかどうか検討した。その結果、AVR-Pitaの同一ホモログがキビ菌(Pyricularia oryzae)とメヒシバ菌(P.grisea)に存在することを見出した。さらに、AVR-Piiのホモログのうち、AVR-Pii2がイネ菌(P.oryzae)とCenchrus菌(Pyricularia sp.)に、AVR-Pii3がコムギ菌(P.oryzae)とCenchrus菌(Pyricularia sp.)に存在することを見出した。これらのことから、いもち病菌の非病原力遺伝子は、一般的性質として種を超えて水平移動しうると考えた。 以上の事実を総合し、非病原力遺伝子の「貯蔵庫」の候補として、メヒシバに加えCenchrus属植物も加えることとし、菌株の採集を開始した。ベトナム国南部ホーチミン市・メコンデルタ、中部ダナン市、北部ハノイ市の水田を歩き、イネとその周辺雑草のいもち病斑を採集した。総計20地点のイネ・メヒシバ・Cenchrus属植物・その他イネ科畦畔雑草から56サンプルを得た。 なお、採集の過程でベトナムの南部と北部では、いもち病菌の伝染環が異なるのではないか、と考えるに至った。北部では、日本のようにイネの栽培が途切れる「冬」が存在する。一方、南部では3期作が行われ、刈り取り期のイネと田植え期のイネが途切れることなく共存している。このような環境下では、いもち病菌はイネの上だけでも周年伝染環を回転できると考えられ、このことはいもち病菌の抵抗性品種に対する適応戦略にも大きく影響していると推測できる。このような観点から北部と南部のいもち病菌集団の比較解析を行えば、生存環境と非病原力遺伝子の動態の関係が解明できるのではないかと考えた。
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