2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネいもち病菌非病原力遺伝子はなぜ彷徨するか-メヒシバ菌貯蔵庫仮説の検証
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22658014
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土佐 幸雄 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20172158)
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Keywords | Magnaporthe oryzae / Pyricularia oryzae / 非病原力遺伝子 / イネ / メヒシバ |
Research Abstract |
1.本年は、ドイツホーヘンハイム大学を拠点に、イタリアにていもち病に罹病したイネならびにメヒシバ等水田周辺の雑草を採集した。これらをホーヘンハイム大学に持ち帰り、単胞子分離を行い、計63菌株を得た。現在これらは、同大学で保存されている。これを日本に輸入するため、神戸植物防疫所を通して農林水産省に輸入許可申請を行っているところである。 2.菌株の採集と輸入に当初の予定より時間がかかったため、「貯蔵庫仮説」の生態学的検証には至らなかった。そこで、現在保有している菌株の中にそれを示唆する証拠がないかどうか検討した。Pita(イネ品種ヤシロモチのもつ抵抗性遺伝子)に対する非病原力遺伝子AVR-Pitaは、ファミリーを形成していることが知られている。そのメンバーのうち、AVR-Pita1はP.oryzae(栽培植物寄生菌群)に普遍的に存在する一方、AVR-Pita2はP.grisea(メヒシバ菌)に存在する。我々は昨年、P.oryzaeのうちのキビ菌が、AVR-Pita2を保有することを見出した。そこで、キビ菌のAVR-Pita2を保有するフォスミドクローンを選抜・シークエンスし、メヒシバ菌のものと比較した。その結果、キビ菌のAVR-Pita2の3'側にはメヒシバ菌の場合と同じくfull lengthのレトロトランスポゾンInago1が存在することが判明した。また、5'flankを詳細に検討したところ、いずれも、Inago 1 solo LTRの挿入という同一の構造を有していた。これらのことから、キビ菌のAVR-Pita2は、メヒシバ菌から種を超えて獲得したものであると考えた。これは、非病原力遺伝子の水平移動が、P.griseaとP.oryzaeの間で起こっているという強力な証拠であると考えられる。
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