2011 Fiscal Year Annual Research Report
寄生蜂胚の宿主に対する「分子擬態」解明のための基礎的研究
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22658015
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岩淵 喜久男 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (00203399)
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Keywords | 社会性昆虫 / 寄生蜂 / 発生 / 擬態 / 細胞認識 |
Research Abstract |
前年度に行った、分子切断と競合阻害の処理実験による解析ならびに電子顕微鏡による寄生蜂と宿主細胞間の微細構造の解析より、本寄生蜂胚の宿主への侵入時に想定される「分子擬態」には、カドヘリン、レクチン等の細胞認識ならびに細胞接着に関わる分子が関わっていることが明らかとなった。 そこで、本年度は、侵入時に発現する遺伝子群について、クローニングをおこなうとともに、細胞認識と細胞接着に関連のある遺伝子について遺伝子情報を基にした関連分子の候補特定をおこなった。この解析により、LIMファミリータンパク質、W40ファミリータンパク質などカドヘリンシグナル伝達系に関わる遺伝子の発現が確認された。さらに、データバンク上の多胚性寄生蜂Copidosomafloridanumの塩基配列データの中から、胚子侵入機構に関与が想定される配列を選抜し、それらの特異的プライマーセットを設計した。これとは別に設計したE-カドヘリンのユニバーサルプライマーを合わせ、DNAと桑実胚RNA由来のcDNAを鋳型にしてPCR増幅をおこなった。その結果、カドヘリン2種とインテグリン3種が宿主への侵入時期である桑実胚期の寄生蜂胚で発現していることが明らかとなった。さらにE-カドヘリンの全塩基配列を決定することを目標に、特異的プライマーを設計、KOD plus (TOYOBO)を用いた結果、2,500bp部分を明らかにした。これらの結果より、本寄生蜂による宿主への親和的侵入における「分子擬態」に関わる分子はカドヘリンとレクチンと推定され、カドヘリンについては遺伝子構造の一部を明らかにした。今後、宿主カドヘリン遺伝子との相同性の確認、RNA干渉等による侵入阻害の確認など、異種動物間ではきわめて珍しい分子擬態による親和的侵入機構の全貌解明と応用に向けた研究が期待される。
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Research Products
(3 results)