2010 Fiscal Year Annual Research Report
高度不飽和脂肪酸含有リン脂質のシャペロン機能の解明と膜タンパク質高生産への応用
Project/Area Number |
22658028
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 准教授 (70243087)
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Keywords | 微生物 / 生体膜 / 高度不飽和脂肪酸 / リン脂質 / 膜タンパク質 |
Research Abstract |
1. 南極海水から単離された低温菌Shewanella livingstonensis Ac10は低温でエイコサペンタエン酸含有リン脂質(EPA-PLs)を生産する。本菌の低温誘導性主要外膜タンパク質Omp74の生理機能の解明と、本タンパク質のフォールディングにおけるEPA-PLsの役割の解明を目的として研究を行った。Omp74が細胞膜の安定性を維持する構造タンパク質としての機能と、可溶性分子の輸送に関与するポーリンとしての機能を有することを明らかにした。一方、野生株とエイコサペンタエン酸(EPA)欠損株においてOmp74が異なる立体構造を形成していることを見いだした。Omp74の立体構造形成とEPA-PLsの関連を詳細に解析するために、化学合成したEPA-PLsを含むリポソームと、精製したOmp74を用いたin vitro再構成実験を行った。その結果、EPA-PLsを含むリポソームで、Omp74は速やかに膜表層と相互作用しβ-シート構造を形成することがわかった。また、EPA-PLsを含むリポソームに再構成したOmp74のプロテアーゼ感受性やTrp蛍光スペクトルが、EPA-PLsを含まないリポソームを用いた場合とは異なることがわかった。以上の結果から、EPA-PLsはOmp74の膜への組み込み、および立体構造形成を促進する分子シャペロン様の機能を有することが示された。 2. S.livingstonensis Ac10はEPAをリン脂質のsn-2位アシル鎖成分として有し、EPA欠損によって顕著に表現型が変化する。蛍光標識エーテル型リン脂質を用いることにより、細胞分裂部位においてEPA依存的な生体膜マイクロドメインが形成されることを見いだした。
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