Research Abstract |
放線菌は多様で有用な二次代謝物を生産する細菌であり,生物防除としての利用が注目されている.大部分の放線菌は土壌中に生息しているが,樹体内にも存在する.そこでブナ科樹木とその周辺土壌からの放線菌の分離とそれらを用いた病原菌Raffaelea quercivoraに対する対峙培養試験を行った.放線菌は,三重大学構内に生育するコナラ、アラカシ、ウバメガシの実生各3個体の葉、茎、根系、根圏土壌から行った.分離,純化された放線菌株を1/2PDA培地に静置し2日間培養した後,R.quercivora菌株を6cm離して静置し,さらに5日間培養した.その後,放線菌株と病原菌株との間に形成された生長阻止帯幅を計測した.その結果,実生から419菌株,根圏土壌から497菌株が得られた.純粋培養できた460菌株の中で,R.quercivora菌株すべて生長阻止帯を形成したのは,実生からの2菌株と根権土壌からの15菌株であった。生長阻止帯幅は,R.quercivoraの菌株間で異なっていたことから,放線菌の生産する抗生物質に対する感受性は,R.quercivoraの菌株によって異なると考えられた. また,耕地土壌および植物体内から放線菌276菌株を分離し,ナス科青枯病に対する発病抑制活性を試験管アッセイ法で検討した.活性の高かった10菌株について,次にポット試験で発病抑制活性を調べた結果,2菌株が優れた活性を示した.両株とも寒天培地上では同病菌に抗菌性を示さなかったが,一方の菌株はトマト根に定着させると抗菌性を発揮した.この結果から,選抜2株の作用機序はそれぞれ抵杭性誘導および抗生であると考えられた.
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