2010 Fiscal Year Annual Research Report
魚類ゲノムの低い連鎖不平衡を活用した有用遺伝子の同定
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22658057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 潔 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (20292790)
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Keywords | 魚類 / 連鎖不平衡 / 性決定 / ゲノム / トラフグ / 進化 |
Research Abstract |
近年、穀類を中心とした農業生物を対象とする遺伝学的研究の進展により、有用遺伝子座のみならず有用遺伝子の本体が次々と同定されているが、食用魚類において有用遺伝子本体が同定された例はない。本研究では、食用魚類で初となる有用遺伝子本体の遺伝学的な同定を試みた。解析対象としては、高級食用魚であるトラフグの付加価値を左右する精巣形成能を選んだ。 トラフグは、XX-XY型の性決定様式を持ち、その性を決定する遺伝子は、課題代表者らが作製したフグゲノム地図(Fugu version5, http://www.fugu-sg.org/)による大規模連鎖マッピングにより、30-50kbのゲノム領域に存在することが示されていた。性決定遺伝子を同定するため、まず、本領域のリシーケンス解析により、多型サイトの網羅的な同定をおこなった。次に、本領域の連鎖不平衡状態を調べたところ、その度合いが著しく低いことが明らかとなった。これは、トラフグが比較的長期間にわたり大きな有効集団サイズを維持してきたことを示唆している。トラフグは乱獲によって個体数が減少していると考えられているが、その影響は連鎖不平衡状態には未だ反映されていないようであった。次に、連鎖不平衡マッピングをおこなったところ、性決定領域を一つの遺伝子にまで絞り込むことに成功した。この性決定遺伝子情報を基盤とすることにより、トラフグの性を迅速に判別する方法が開発可能となった。脊椎動物の性決定遺伝子は、これまでに、哺乳類のSRY、メダカのDMY、アフリカツメガエルのDM-Wしか同定されていない。本研究の成果は、新しい性決定遺伝子の存在を示しており、基礎科学的にも高い価値を持つと考えられる。
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[Remarks] 投稿中の以下の論文が、acceptable with minor revisionsという状態である。
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[Remarks] Kai, Kikuchiら"Integration of the Genetic Map and Genome Assembly of Fugu Facilitates Insights into Distinct Features of Genome Evolution ln Teleosts and Mammals." Genome Biology and Evolution, (acceptable with minor revisions)
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