2011 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄同位体比の微細分布を用いた鉢クラゲ類平衡石の形成過程に関する研究
Project/Area Number |
22658062
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
豊川 雅哉 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 主任研究員 (60371837)
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Keywords | 硫黄同位体比 / 人工海水 / NanoSIMS / 平衡石 / 硫酸イオン / カルシウム / バイオミネラリゼーション / ミズクラゲ |
Research Abstract |
1.異なる硫黄同位体比(δ34S)を持つ人工海水中で飼育したミズクラゲの平衡石のδ34Sを測定した。テトラマリンソルトプロ(テトラジャパン)中で飼育したミズクラゲの平衡石のδ34Sは12.6‰(sd=0.22,N=3)、ライブシーソルト(デルフィス)中で飼育したものでは2.9‰(sd=0.17,N=2)、人工海水のδ34Sは~各々10.8‰(sd=0.20,N=6)、-0.4‰(sd=0.23,N=5)であつた。同位体分別は+1.8から+3.3‰見られたが、これには硫酸カルシウムを硫酸バリウム化しないで分析することによる約+0.3‰、硫酸カルシウムを銀カプセルとスズカプセルで二重に包んで分析することによる約+0.2‰、試料量が少ないことによる+0.2から+0.6‰の計+0.7から+1.01‰のバイアスが含まれる。 これらを差し引いた同位体分別は+0.7から+2.2‰と考えられた。鉢クラゲ類の平衡石の硫黄同位体比を測定したのは初めての事例である。 2.硫黄同位体試薬を使ってδ34Sが2000‰程度になるように調整した人工海水で、ミズクラゲを2日間飼育し、平衡石を標識した。切り出した平衡胞を樹脂包埋、研磨し、NanoSIMS分析用の試料を作成した。分析は次年度に行う予定である。 3.海水のδ34Sに海域差は無いが、硫酸還元菌の活動が大きい間隙水ではδ34Sが高くなる他、低塩分での硫酸基取り込みでは同位体分別が大きい。Nano SIMSによる平衡石中のδ34Sの微細分布の分析が可能になり、大型クラゲの平衡石に高いδ34Sを示す部分が見つかれば、発生場所を特定する手がかりになると考えられる。
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