2010 Fiscal Year Annual Research Report
亜鉛シグナルを標的にした新規肥満細胞スタビライザーによるアレルギー性疾患の克服
Project/Area Number |
22658089
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 正敏 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70211547)
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Keywords | Zn^<2+> / 肥満細胞 / マクロファージ / 術後腸麻痺 / アレルギー |
Research Abstract |
本年度は、術後腸麻痺モデルマウスを用いて、新規Zn^<2+>キレーターIPZ-010の効果について検討した。その結果、IPZ-010(30mg/kg、術前1時間、術後2、4時間皮下投与)の投与により、術後腸麻痺による回腸炎症部のマクロファージと好中球浸潤が有意に抑制される成績を得た。さらに、経口投与による効果について解析したところ、経口投与によっても皮下投与とほぼ同等の炎症抑制作用を示した。次に、IPZの皮下投与によって術後腸麻痺による消化管輸送能低下に対する効果について解析した。経口投与後1時間での蛍光ラベル生理食塩水は対照群では回腸末端部まで輸送されていたのに対して、腸摩擦の処置をした群では投与した腸内容物は空腸上部までしか輸送さえていなかった。すなわち、小腸摩擦処置により顕著な消化管輸送能低下を示した。これに対して、腸麻痺の処置前、処置後にIPZを皮下投与した群においては、消化管内容物は回腸中部まで輸送されており、有意な消化管輸送能の改善が認められた。一方、Zn^<2+>シグナルは肥満細胞でのサイトカイン分泌に影響する可能性が示唆されているが、他の炎症・免疫担当細胞の炎症応答におけるZn^<2+>シグナルの関与については全く明らかではない。そこで、RAW264.7マクロファージ細胞を用いてLPS刺激によるサイトカイン産生に対するIPZ-010の効果について解析したところ、IPZ-010はマクロファージの炎症応答に対して有意な効果を示さなかった。以上、初年度の成績から新規Zn^<2+>キレーターIPZ-010は経口投与、皮下投与いずれにお入れも肥満細胞が関与すると考えられる術後腸麻痺の炎症を軽減させることが明らかになった。今後、Zn^<2+>キレーターIPZ-010の作用機序について肥満細胞をはじめ、炎症応答細胞での効果を解析すると共に、アレルギー性腸炎に対する効果についてさらに解析を行う。
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Research Products
(3 results)