2010 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞誘導因子を用いた受精前後における全能性獲得機構の解明
Project/Area Number |
22658091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 不学 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (20175160)
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Keywords | リプログラミング / 初期胚 / 受精卵 / 全能性 / iPS細胞 |
Research Abstract |
受精前の卵は生殖細胞として最終分化した状態にあるのに対し、受精後の胚はどのような細胞にも分化できる全能性を有している。また分化した体細胞の核を未受精卵あるいは受精直後の胚の細胞質に移植することによって作成された体細胞核クローン胚は、全能性を獲得している。このように受精前後の卵あるいは胚の細胞質中には、分化した細胞核を全能性のあるものに変換する因子が存在するものと考えられる。一方、近年、分化した体細胞に4つの因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)を強制発現させるだけで、多能性を持つ胚性幹細胞様の細胞に変化させることができることが示された。そこで本研究では、これら4つの因子の受精前後における全能性獲得機構への関与を明らかにすることを目的とした。 本年度はまず、4つの因子の受精前後における発現について調べた。その結果、RT-PCRではすべての発現を検出できたが、Oct3/4とc-Mycの発現量が多いことが示唆されたため、まずこの2つの因子に着目して研究を行うことにした。免疫染色法により、これらのたんぱく質の局在を調べたところ、いずれも受精直後の1細胞期胚で核内への強い局在が認められた。特に、Oct3/4は受精後に著しく核局在が増加することから、まずOct3/4のsiRNAを作成し、これを成長卵に顕微注入し、in vitroで卵成熟させた後に、受精後の発生への影響を調べた。その結果、siRNAによりOct3/4のmRNAは分解され、受精後のタンパク質の核局在は著しく減少していた。そしてこのような胚では、2細胞期への分裂が阻害され、1細胞期で発生を停止していた。今後は、どのような機構で分裂停止が起こっているかを解析することで、Oct3/4のリプログラミングへの関与を明らかにしていく予定である
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