2011 Fiscal Year Annual Research Report
マウスをモデルとした児童虐待に関するトランスレーショナル研究
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22658093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
海老原 史樹文 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50135331)
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Keywords | マウス / 児童虐待 / 動物モデル / 脱ユビキチン化酵素 / 養育行動 / 遺伝子変異 / ストレス |
Research Abstract |
現代社会において、児童虐待は極めて深刻な社会問題となっている。厚生労働省の調査によると、全国の児童相談所で対応した児童虐待相談対応件数は平成10年から急激に上昇し、平成20年では約4万2千件と過去最悪を更新している。児童虐待は、一時的な影響だけではなく、子供が成長した後の将来にわたって影響を及ぼし、虐待が虐待を生む世代間連鎖や、虐待を受けた児童の成長後の犯罪率の高さなど極めて重大な影響を児童に与える。本研究は、最近申請者が同定した、絶望行動を制御する遺伝子"Usp46"の突然変異マウスを児童虐待のモデルとして活用し、仔マウスに及ぼす虐待の影響を行動学的、神経科学的、組織学的観点から明らかにすることを目的としている。Usp46突然変異マウスの養育行動は児童虐待に極めて類似しており、動物モデルとして確立できる可能性が高い。そこで、ヒトの児童虐待の特徴である、(1)虐待の反復性、(2)虐待の世代間連鎖、(3)ストレス負荷による虐待誘発、について検討した。(1)虐待の反復性:生後間もない仔マウスをケージの3角に1匹ずつ置き、仔マウスに対する行動を30分間ビデオ観察した。この観察を1週間程度の間隔で3回繰り返した。その結果、Usp46変異マウスは仔マウスを傷つける個体が多く、その個体に限って反復的に仔を傷つけた。(2)虐待の世代間連鎖:母子交換テストを行い、Usp46変異マウスを里親にした揚合、遺伝的に正常なマウスでも、成長後、育ての親と同様に養育行動に障害が現れることが分かった。(3)ストレス負荷による虐待誘発:単飼ストレスを負荷した場合、正常マウスに異常は認められなかったが、Usp46変異マウスでは養育行動に著しい異常が現れることが分かった。これらの実験結果から、USp46変異マウスは、児童虐待のモデルとして活用できる可能性が示された。
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