2011 Fiscal Year Annual Research Report
匂い結合タンパク質を利用した匂い分子の可溶化技術の開発と嗅覚バイオセンサへの応用
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22658109
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
櫻井 健志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (20506761)
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Keywords | 嗅覚バイオセンサ / 昆虫 / 匂い結合タンパク質 / 嗅覚受容体 / 生体機能利用 |
Research Abstract |
本研究は、昆虫の嗅受容細胞を囲む感覚子リンパ液中で発現し、匂い分子の可溶化および嗅覚受容体への輸送機能をもつ匂い結合タンパク質(OBP)を用いて、気中の匂い分子を液中に可溶化する技術を開発することを目的とした。研究期間では、可溶化効率の検討に十分な量のOBPを得るための大量発現系と簡便な精製法の確立および精製OBPを用いた匂い可溶化技術の開発を目指し研究を行ってきた。 前年度に引き続き、カイコガフェロモン結合タンパク質(BmPBP)を用いた大腸菌でのOBPの大量発現系と簡便な精製法の確立を行った。OBPの機能発現に必要な分子内ジスルフィド結合の形成が可能なペリプラズムでの発現のための移行シグナル配列および、精製効率が高いeXactタグを融合したBmPBPの大腸菌での大量発現を行った。複数の異なるペリプラズム移行シグナルを用いて、ペリプラズム画分での発現を検討したがBmPBPのペリプラズムでの発現は確認できなかった。そのため、方針を変更し、細胞内でジスルフィド結合を形成するための変異を加えた大腸菌株Rosetta-gamiの細胞内での発現を行い、発現タンパク質の大部分が可溶性画分に検出される条件を見出した。exactタグを用いたアフィニティー精製を行った結果、その溶出画分はSDS-PAGE上で単一バンド(分子量約15KDa)を示し、ワンステップでPBPを単一な状態まで精製できることを明らかにした。そこで、この方法により本研究でセンサ素子として用いるショウジョウバエ嗅覚受容体OR43aとOR47aを発現する嗅受容細胞を含む感覚子で発現するOBP83aの精製を行った結果、同様にワンステップで単一バンドに精製できることが明らかになり、本方法がOBP全般に有効である可能性が示唆された。しかしながら、OBPの簡便な精製法の確立に当初の予定より長期間を要したため、精製OBP83aを用いた匂い可溶化効率の検証には至らなかった。研究期間は終了したが、本研究で確立した精製法を利用し、OBPによる気中の匂い分子の可溶化効率を検討していきたい。
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