2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規ナノ粒子DDSの開発と斬新的脳血管障害治療法の確立
Project/Area Number |
22659010
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
奥 直人 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10167322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 知浩 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00381731)
清水 広介 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30423841)
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Keywords | 虚血性疾患 / リポソーム / 薬物送達 / DDS / タムスロシン / 細胞保護効果 / ナノ粒 / 脳梗塞 |
Research Abstract |
脳虚血/再灌流障害は、脳梗塞治療後血流再開に伴って生じる二次的な障害である。我々は灌流後に虚血巣を中心に起こる血液脳関門の破綻による血管透過性亢進により、リポソームDDSを用いた障害部位への薬剤送達が可能であることを明らかとした。そこで近年その脳保護効果が多数報告されているFK506を選択し、リポソーム製剤の有用性について検討した。FK506のリポソームへの封入を試みた結果、長期血中滞留性を示す約100nmのサイズに、約30%の薬剤封入率でFK506封入PEG修飾リポソーム(FK-Lip)を調製することに成功した。一過性中大脳動脈閉塞(t-MCAO)モデルラットにDiIC_<18>で蛍光標識したFK-Lipを尾静脈内投与しIVIsによるex vivo解析を行い、FK-Lipは投与後早期から虚血巣を中心に集積し、脳実質組織に広く分布することが示された。次に、FK-Lipの薬理活性を検討した。in vivo実験では、有意な抗炎症効果が示された。最後に、t-MCAOモデルラットにおけるFK-Lipの治療効果を検討した。FK-LipはPBS投与群、同用量のFK506投与群と比較し、急性期における脳細胞死、脳浮腫、運動機能障害、脳血流不全を有意に抑制し、その後の長期的な経過観察においても良好な改善効果を示した。よってFK-Lipは原薬と比べ脳虚血/再灌流障害に対する治療効果が向上し、投与量を低減可能であることが示された。 以上より、FK-Lipは優れた脳虚血/再灌流障害改善効果を示し、脳梗塞患者のQOL向上に貢献することが期待される。本実験において、薬剤封入ナノキャリアが脳虚血/再灌流障害に対し有用性を示したことは、多くの低分子化合物においてナノキャリアDDSを基盤とした治療戦略が当該障害に適応可能であることを示唆する。本研究が難航する新規脳保護薬の開発の一助になることを期待する。
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